2016年8月23日火曜日
2016年8月20日土曜日
本当の健康十訓
地域住民の方々を対象に,「元気で長生きする秘訣」というテーマでお話しさせていただくことになりました.
心根がねじ曲がっているので,ちょっと変わった健康講話を計画しております.
現在絶賛作成中ですが,いまのところ予定しているツカミの部分をこちらに転載いたします.
この本を参考にしました.世界医師会長Sir Michael Marmotの著書です.
心意気が伝わってきます.胸を熱く奮い立たせてくれる本です.
1999年,イギリス主席医務官が
健康になるための10のポイントを発表しました.
この手のリストは世界中どこにでもあるものです.
1.禁煙しましょう
2.果物野菜中心にバランスの良い食事を
3.運動しましょう
4.ストレスを避けリラック…スする時間を
5.お酒はほどほどに
6.直射日光は避けましょう
7.安全な性交渉を
8.がん検診を受けましょう
9.安全運転を心がけて
10.心肺蘇生を習いましょう
(注:わかりやすさ重視で意訳しています.以下同様)
この提言について,Sir Michael Marmotはこのように述べています.
このリストは素晴らしい
健全な科学に基づいている
そして,心底どうでもいい
(注:わかりやすさ重視で意訳しています.以下同様)
この提言を見た人は,きっとこう考えるはずです.
今すごいストレスを抱えているけど,
ちゃんとリラックスする時間をとったから問題ないね.
(注:わかりやすさ重視で以下同様)
…痛烈な風刺,皮肉ですよね.読んでいるこっちが心配になります.
じゃあMarmotさん,どんなリストがいいんですか?
ということで,お勧めしているのがこちら.
ブリストール大学デイビッド・ゴートン作
本当に健康になるための10のポイント
1.貧しくなるな
2.貧困地域から引っ越しましょう
3.障害者になるな
4.ストレスの多い低賃金の仕事に就くな
5.ホームレスになるな
6.社会的な活動に参加しましょう
7.ひとり親になるな
8.あらゆる権利を行使しましょう
9.マイカーを持てるようになりましょう
10.いい教育を受けて勝ち組になりましょう
(注:以下同様)
Marmotはこう述べています.
このリストは健全すぎる科学に基づいている.
ここからわかることは以下の一点だ.
何が健康に悪いか分かっていても,自分でできることはほとんどない.
(注:同様)
こんな刺激的な文章で始まる第2章のタイトルは
Whose Responsibility?
健康はだれの責任か?
今日の健康講話では,皆さんが健康で長生きするのはだれの責任かについて考えていきます.
と,こんなツカミで話をしようとおもいます.
誤解を与えないように注意して,本当の健康は何か,考える機会になれば.
2016年8月12日金曜日
ミルク・アルカリ症候群
今週のNEJM Case Recordが,ミルク・アルカリ症候群についてでした.
Case 24-2016 — A 66-Year-Old Man with Malaise, Weakness, and Hypercalcemia
このブログでも以前取り扱っています.
過剰検査に対する注意などもかかれており,非常に勉強になるので,ぜひ本文も読んでください.
ミルク・アルカリ症候群について簡単にまとめます.
現在ではカルシウム製剤やビタミンDが広く使われるようになったことで,発症が増えています.
2005年の研究では,高カルシウム血症の8.8%,重症の場合は25.7%を占めています.
サイアザイドはCa再吸収を促進するためリスク因子となります.
NSAIDsもリスクです.
高Ca血症に加え,急性腎障害,代謝性アルカローシスが起こります.
高Ca血症+急性腎障害なので,多発性骨髄腫との鑑別が問題となります.
そもそも高Ca自体が脱水→腎前性腎不全をきたすので,これだけでは決め手に欠ける印象ですね.
2016年8月7日日曜日
家庭医療学夏期セミナーに出展しました
昨日から行われている家庭医療学夏期セミナーにセッションを出しました.
http://www.jpca-srs.umin.ne.jp/kasemi/28th/
家庭医はあらゆる健康問題に立ち向かう.
ならば,「絶望事例」(私の造語です)に出会ったとき,私たちはどうするか
ということを学生さんに考えてもらいました.
初診で訪れた80代女性と長男.褥瘡からの蜂窩織炎で入院.
介護資源に乏しく,経済問題,家族間の葛藤,その他さまざまな問題がある複雑事例
使える制度をすべて使って,一生懸命プランを考えたけど,キーパーソンの拒否にあい水泡に帰してしまった.
さて,どうする.どうやってあなたは前を向くか.
という流れです.
(実際に提示した内容はもっとエグイです)
常々,心を動かし感情を揺さぶる発表をしたいと心がけています.
今回は,こちらの想定通りに
面食らう→なんとか食らいつく→これはやばいぞと感じ始める→力を合わせてやり遂げる→満足→と思ったらあれよあれよと絶望のどん底に→呆然→怒り・悲しみ→無力感→でも前を向く→感涙
という一連の心の動きを100分で演出できたので満足しています.
セッションで伝えたかったClinical Pearlは以下のとおり
「家庭医はそれでも患者とともにいる」
「絶望事例を診られるのはこの地域に私たちしかいない」
「家庭医療に心臓を捧げよ」
お勉強としては,臨床問題の複雑さ(Complexity)を紹介しました.
General practice-Chaos, complexity and innovation.
Martin C, Sturmberg P Med J Aust 183(2):106-9,2005
simple, complicatedはゴールが問題解決ですが,
complex, chaosは問題解決が不可能なことが多く,安定化(stabilizing)を目指すことになります.
もとはEBMの延長線上にある概念で,どのように臨床上の知を事例に適応するかについて考察されたものですが,家庭医療特有のundifferentiated problemを扱う際に有用な概念であると理解しています.
原著には定義も書いてありますが,これはセッティングで変わる気がします.
実際,私のいる病院では定義上complexな問題はcomplicatedとして扱うという具合に.
複雑さのレベルが一段階下がっている印象を受けます.
原著のchaosの例がそれほどchaoticに見えないですし.
chaosはnot undestandable until stabilisedであるとありますが,これは本当にその通りだなと思います.
2016年8月1日月曜日
高血圧の非薬物療法のエビデンス
BMJの10-minute consultationより
患者さんへの説明に使えそうだったので抜粋します。
・40-69歳の高血圧患者では、収縮期血圧が2mmHg上がるごとに、虚血性心疾患による死亡リスクが7%上がり、脳卒中による死亡リスクが10%上がる。
・具体的なリスク計算はQRISKでおこなう。
このサイトに項目を入れていけば、10年後の虚血性心疾患、脳卒中死亡リスクなどが計算できる。大変便利。初めて知りました。
・食塩摂取を4.4g/day減らせば、血圧は5/3mmHg下がる。
・肥満患者は、体重を0.45kg落とせば血圧が1mmHg下がる。
・DASH食を食べるとアメリカの典型的な食事と比べて血圧が6/4mmHg下がる。
引用
Poor adherence to antihypertensive drugs
BMJ 2016;353:i3268
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