2015年11月30日月曜日

ベンゾジアゼピンの依存



数年間エチゾラム(デパス)を服用していた方が別の原因で入院され、依存形成が疑われたケースを経験しました。

とくに高齢者へのベンゾジアゼピン投与はBeers criteriaでも注意となっています。


頻用されることの多いベンゾジアゼピン系は以下の通り
ハルシオン、サイレース、ロヒプノール、デパス、ソラナックス
マイスリー(ゾルピデム)は非ベンゾジアゼピンですが、準じた扱いが必要です。

ベンゾジアゼピン系は常用量でも長期投与で依存が形成されます。
耐性も生じやすく増量は要注意です。
経験例の場合では、常用量の長期投与で身体的依存も形成されていました。


また急激な服薬中止は、離脱をおこすこともあります。
最悪の場合、致命的になるので、要注意です。
離脱症状は、不安、抑うつ、知覚過敏、振戦、痙攣、頭痛などがありますが、
服薬前より不眠が悪化する反跳性不眠は、長期服用を促してしまい厄介です。


高齢者では副作用も問題になります。
認知症リスクは1.5倍程度高まります。
90日以上など長期に投与するほどこのリスクが高まります。
服薬後5年以上経過してからリスクが有意になります。

また、転倒および外傷のリスクも1.5倍程度たかくなります。
新規に服用開始して14-30日以内が最も危険です。


そもそも、高齢者に対する睡眠薬の効果は明らかではありません。
少なくとも長期的な有効性についてのエビデンスは存在しておらず、
短期間の有効性も限定的です。


今回のように、デパスなど短期間作動薬で依存が起こっている場合の治療は、
長期間作動薬(マイスリー、メイラックス)に変更し
数か月かけて徐々に減薬していくことになります。


ベンゾジアゼピンの代替薬としてはロゼレムがありますが、
徐々に効いてくる薬であることを説明する必要があります。



参考文献
・いまどきの依存とアディクション 2015年
日本プライマリ・ケア連合学会誌 38(3) 228-242
UpToDate- Benzodiazepine poisoning and withdrawal