引き続き,Medical Teacher誌に掲載された,経験に基づく学習(ExBL)の解説論文を訳します.
Tim Dornan, Richard Conn, Helen Monaghan, Grainne Kearney, Hannah Gillespie & Deirdre Bennett (2019) Experience Based Learning (ExBL): Clinical teaching for the twenty-first century, Medical Teacher, 41:10, 1098-1105
能力
経験が卒業生に与える能力には3種類ある:知的能力(知っている)、実践的能力(スキルがある)、そして情動的能力(感受性がある).そして,それぞれがサブタイプを有している。能力のタイプは境界が曖昧であり,それは各能力が複雑かつ個性的で、場面により様々に変化し、互いに重なり合い、臨床経験を通じて進化するためである.我々はラベルを、ある(サブ)タイプの能力を別の機能と正確に区別する定義としてではなく、各能力の原型を示すものとして利用している。
・知的能力
経験とRPLを省察することから生じる知識とは,医師となり,医師であり続けるための方法,医師が医学を実践する文脈,およびその実践の構成についての一元的な理解である。この能力のサブタイプには、応用的知識と推論スキルがある.
・実践的能力
これは観察可能な行動のセットを指す.つまり,:臨床スキル(患者に直接影響を与える行動)と自己管理スキル(学生や医師が自分の仕事と学習を整理するための行動)から成る.
・情動的能力
情動的能力には、価値観と感情が含まれる。自分が医者であることを自覚し,他者やその仕事に感情的に関わることが卒業生に求められるため、この能力は重要である。この能力は観察可能な行動とはいえないが、行動に確かに影響を与える。このサブタイプには,気分(例:満足感、報酬、不安、怒り)、自信と動機、アイデンティティ(例:自分が医者になりつつあるという自覚、臨床現場に属しているという自覚、患者を治療する権利を有しているという自覚)、態度と価値観(例:理想主義である、敬意を持っている、他者と協働できる、責任感がある)、他者への想い(例:共感、思いやり)がある.情動的能力は、伝統的にあまり強調されてこなかった.表1で詳説する.
表1.
サブタイプ
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トピック
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気分
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肯定的な気分である
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幸せである 光栄である 刺激を受けている 誇っている 安心である 報われている 安全を感じている 満足している
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両価的あるいは否定的な気分を認識し適切に対応している
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心配である 葛藤している 落ち込んでいる 怯えている 苛立っている 悲しんでいる ストレスである 弱っている
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動機と自信
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達成した 自信がある モチベーションがある 自己効力感がある
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他者に対しての感情
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共感している 同情している
恐怖や嫌悪など他者への否定的な感情を認識し対応している
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態度と価値観
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おもいやりがある 協働的である 批判的でない 境界を認識している 限界を認識している 敬意がある 責任感がある 自己を認識している 個人の価値観を示している 肯定的態度を示している
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