2020年3月30日月曜日

梅毒アップデート(NEJM review article)


NEJMに梅毒のレビューがありました.
そこまで遭遇頻度は高くないためか,私にとっては穴になりがちなところです.
これを機にしっかりとした知識をつけたいと思います.

The Modern Epidemic of Syphilis
N Engl J Med 2020; 382: 845-54.

文献には検査や治療のことも書かれていましたが,本記事では徴候と自然史について詳しく述べます.

・感染後数日以内に菌体は全身に広がる.CNSや胎児に感染することもある.
・一期梅毒といえば硬性下疳chancre.
・浸潤したり潰瘍形成したりするが,基部は保たれている.
・多くは無痛性で性的接触のあった場所に孤立性にできる.
・なので直腸周囲,直腸,口腔にできることもある.
・多数の有痛性潰瘍として出現することもあるので,無痛の孤立性結節でないからといって否定はできない.

・二期梅毒は多種多様な症候を呈する.
・搔痒のない手掌足底の皮疹をみたら,まず梅毒から疑う
・発熱やリンパ節腫大,粘膜病変,脱毛症を呈することも.
・骨膜炎が起こることもあるらしい.知らなかったのでCase reportを漁ると,両側脛骨の圧痛を呈するケースが多いのかもしれない.
・肝炎(肝性梅毒)をきたすこともある.ALPが高くなるが,AST,ALTはそこまで高くならない.
・梅毒で糸球体腎炎が起こりうる.初めて知りました.調べるとネフローゼになることもあるらしいです.

・神経梅毒はどのステージでも起こる.
・初期で起こりうる徴候は髄膜炎や脳神経障害.
・三期でおこる神経梅毒は髄膜血管型梅毒と実質型梅毒.
・髄膜血管型梅毒の徴候は片麻痺,失語,けいれんなど
・脊髄の血管を侵すこともある.
・実質型梅毒は全身の進行性麻痺または脊髄癆を来す.
・全身の進行性麻痺の症状は,易刺激性,認知機能障害,精神症状(妄想,錯乱)など
・脊髄癆は疼痛の鈍麻,失調,失禁など.
・脊髄癆のvisceral crisisって何?と思って調べたところ,脊髄後角や後枝が侵されることで,腹痛や背部痛が起こるとのこと.(PMID:30045319) 知らなかった.
・一期梅毒で神経症状がなければ髄液検査は推奨されない.

・ちょっとした視野異常,聴力異常は見落とされやすい.眼性梅毒,耳性梅毒もどのステージでも起こりうる.
・心血管の病変やゴム腫は有名だけど,調べるとさすがに現在では稀とのこと.

・梅毒の経過についてはFig.2が非常にわかりやすい.


・検査については簡単にだけ.
・トレポネーマ特異抗体は,梅毒が現在または過去感染していたことを示す.
・非トレポネーマ抗体は,疾患活動性と相関する.
・初期は陰性.なので一期梅毒疑いで抗体陰性なら2週間空けて再検査.
・非トレポネーマ抗体は無治療で30%がセロコンバージョンする.
・以上を踏まえた上で,下のFiruge 3を頭に叩き込んでおこうと思います.



・治療効果の測定について.
・非トレポネーマ抗体が早期梅毒だと6-12か月後,晩期梅毒だと12-24か月後に1/4いかになっていればserologic cureと判断.
・早期梅毒では6か月でserologic nonresponseが20%,12か月で11.5%.
・ただserologic nonresponseケースで追加の抗菌薬投与をすべきかは不明.髄液検査はしてもいいかもしれない.