2020年3月9日月曜日

困難な状況にいる学習者のためのRDM-pモデル (part 2)



困難な状況にいる学習者に対するRDM-pモデルを解説したThe RDM-p Manualを訳しております.
※原著はA unifying theory of clinical practice: Relationship, Diagnostics, Management and professionalism (RDM-p)

前回(1回目)では,RDM-pモデルの概観について説明しました.
困難な状況にいる学習者に向き合う際には,何が起こっているのか(問題)と,どうしてそれがおこっているのか(原因)をそれぞれ突き止める必要があることが分かりました.

今回(2回目)は,RDM-pモデルで行う「問題」の診断についての概説です.


問題の診断 : RDM-p を通じて

 RDM-pアプローチで再認識すべきことは、質の高い結果を出力するには入力の質が高くないといけないという事実である。 したがって、データ収集に時間を費やすことが重要である.学習者のパフォーマンスが気にかかるとき、多くの場合その懸念は何らかの証拠(データ)に起因するものである。 この種の証拠には以下のようなものがある.

・あなたが直接観察したり、気づいたりしたこと:例えば、学習者の部屋に手紙の山があり,迅速な返信ができていないところを目撃する。

・他の人が発言したこと: 受付スタッフが、学習者にどれだけ下に見られているか訴える.患者が,学習者の態度について不満を言う.診療マネージャーが、学習者がいつも仕事に30分遅れているようだと伝える。

 RDM-pモデルが有効に機能するためには,このような具体的な「証拠」をできる限り集めることが重要である.しかしこのモデルでは,この時点で結論に飛びつくのではなく,まずは集めた証拠がパフォーマンスに対する懸念のどの領域に当てはまるのかを考える.一般的には,(患者,同僚,その他,あるいは学習者自身の文脈における)学習者のパフォーマンス不足は,RDM-pの4つの領域のどれか1つ以上に当てはまる.

R: Relationship 
関係性の構築または維持に関する問題-患者、同僚、または他の人との関係性に関連する

D: Diagnostics
診断の問題-情報の収集や解釈、優先順位付け、意思決定(臨床に限らず,人生の他の部分の意思決定も含む)に関連する

M: Management
管理の問題-管理はここでは、臨床上ではなく組織の管理に関連する。自分の仕事や自分自身,そして他者を整理するような意味が含有されている。

P: Professionalism
プロフェッショナリズムの問題-態度、誠実さ、高潔さ,信頼に関連する。

 このように証拠をマッピングすると、特定の具体的事象から離れて一般化することができ,パフォーマンスの困難さがどの領域に属するものなのか,明確に見通すことができるようになる。4つのRDM-p領域すべてを見直し、困難さを最も示す証拠がどこにあるのかを調べることによって,困難の真の正体が姿を現わす。Norfolkは論文(訳注:原著のこと)でこのように述べている.

 「総合診療にはその本質として,関係性、診断、管理という3つのコアアクティビティ間の微妙な相互作用が内包されている。その3つを連動する『車輪の歯車』とみなし、プロフェッショナリズムを歯車に不可欠な潤滑油であるとして視覚化することがおそらく可能である.これら3つの領域間のダイナミックな相互作用のなかに、職能のあらゆる構成要素が含まれているが,関心の対象の大半は関係性と診断についてである.」