2020年3月23日月曜日

困難な状況にいる学習者のためのRDM-pモデル(part 4)



困難な状況にいる学習者に対するRDM-pモデルを解説したThe RDM-p Manualを訳しております.
※原著はA unifying theory of clinical practice: Relationship, Diagnostics, Management and professionalism (RDM-p)

前回(3回目)では,SKIPEフレームワークの概論と,論理的基盤の解説を途中まで扱いました.
今回(4回目)は,SKIPEの論理的基盤の残りと,全体のまとめです.

今回で一区切りです.マニュアルにはこの後,詳細な追加解説がたくさん載っていますが,また気が向いたら紹介しようと思います.


•SKIPEは、以上の様々な要因を通る自然経過をシンプルに示す.まず,学習者が実際に示している技能Sとそれを下支えする知識Kのレベルで考える.その後,一歩下がって,技能と知識に影響を与えている可能性のある,他の現在の内部要因Iについて考える。そして,何らかの過去の要因Pがその学習者に継続的な影響を与えているかどうかを自問する.最後に,何らかの外的要因E(学習者の外にある要因)が事態を更にややこしくさせている可能性をチェックする.このアプローチをとることで、SKIPEは学習者に潜在的に影響する要因を,個人の中(現在,過去を問わず)と個人の外(つまり外的要因)の双方で探し,その2つを総合して考える。ここを出発点にして、適切な成長計画の作成が可能となる。

•希望するなら、別の方法で考えてもよい.その場合私たちは、学習者個人そのもの(学習者が普段どのように考え、感じ、振る舞うのか)を理解し,それが専門家としての成長にどのように影響するのかを理解するのに役立つさまざまな要因を、スキップSKIPをしながら探索する必要がある。 その後、外的Externalの影響因子が,学習者個人の考え、感情、行動に現在どのような役割を果たしており,その結果学習者の成長にどのような影響を与えているのかをチェックする.


SKIPEと因果関係に関するTimの言葉

 特定のパフォーマンスの問題を(RDM-p を通じて)診断した後に,因果関係の旅が始まる.つまり,(RDM各領域の) 'SK' に関する証拠を確かめることによって、俎上にある特定の技能または知識をその学習者が身に付けているのかどうかを確認することができる.

•別の時点や環境なら俎上の技術や知識を実践できる場合(したがって、特定のセッティングにおいて既に獲得したスキルを適用できなかった姿を見ていた場合)、どうしてその時はできなかったのかを明らかにするために、より広い「IPE」の旅に乗り出すことになる。

•技術/知識を実践したことがないと思われる場合、決定的な原因がこの領域にある可能性が高い.その場合,IPEの段階のチェックは控えめにして,主要な原因がないかと深く探索する必要はない.

 したがって、因果関係の検索は、常に「SK」のチェックから始めるのが良い。私が経験した最良の例は、ある学習者が「医者中心」であるために紹介されたケースである。最初の「SK」の証拠は、診察場面のビデオなどに見られた(あきらかに患者が示す手がかりを「無視」したり、質問のではなく伝達をしていたりした)。よいでしょう,それが問題の初期診断である。それならば,因果関係を探る重要な出発点は、「患者中心」の診療が実際に意味するものについてどれだけ深く理解しているかを確認することである.患者への対応が指導者等に大きな不満を与えるような医師と一緒に働いたことは何度もあるが、そのような医師は,問題ではなく患者個人を診るということの意味を知らずにいた.このように、因果関係の大本もまたRDM内に存在することが多い.(この場合は”D”の問題である.自分が何をしようとしているのか、なぜ自分の行為が失礼と認識されるのかについての理解/洞察力が欠如している)。一度しっかり問題を理解してしまえば、技能ははるかに自然に発達し始めることが多い。したがって、SKの問題が適切に確認されるまで、より深い問題に飛び込まないのがよい。


トップヒント:パフォーマンスが低い学習者に対し、SKIPEを追跡することは負の要因を明らかにするだけでなく、肯定的な影響も明らかにする(関係性の技能が高い、職業倫理が強い、家族が協力的であるなど)。あなたが対処する必要があると感じる他のどんな問題があろうとも、これらの肯定的な面を強調しなさい。


要約すると

•総合診療の仕事を定義する広範な領域が3つあり(関係性,診断,管理),どれもプロフェッショナリズムが下支えとなっている.RDM-pモデルは、困難な状況にいる医師にとって,このうちのどこに問題があるかを判断するのに役立つ.

•各領域には、特定の知識とそれに対応するスキルセット(SKIPEの”SK”に該当)が必要だが、SKの成長はより広範な要因(SKIPEの”IPE”に該当)によって促進されたり妨害されたりする。

•もがいている学習者にこのモデルを使用する際の鍵は、何がうまくいっていないのかを(RDM-pを用いて)まず突き止めることである.その後、何が原因か、何が問題に影響を与えているかを(SKIPE'フレームワークで手がかりを探すことで)特定するようにする。 SKIPE フレームワークは、より高い精度で原因や影響要因を特定するのに役立つ。そうすることで,あなたと学習者は、成功する可能性が高い「処方箋」を生成するのに適した位置に立つことができる.