2016年7月21日木曜日

ホームレス状態にある人のケア part.1



AFPの2014年の総説ですが,
ホームレス状態の人のケアについてかかれてあります.

学会誌の総説に掲載するその姿勢がカッコいいです。
日本の状況もほぼ同じだよなと実感する内容でしたのでぼちぼち全訳していきます。

Care of the homeless: an overview
AFP 89:634-40.


【訳注】
形容詞のhomelessを「ホームレス状態」と訳すことにします.
Homelessness, the homeless, homeless personsなどの用語も,上記に準じ文脈に応じて訳しわけます.
日本で使われる,人あるいは集団をさす言葉としての「ホームレス」は,あたかも固定化された集団であるかのような印象を与える(と個人的に思っている)ためです.



ホームレス状態の人々に対するケア:概観


男性でも女性でも子どもでも,あらゆる人種,民族の人々が,ホームレス状態になりうる.アメリカでは,どの夜も61万人以上の人がホームレス状態にいる,ホームレス状態にあると,一般人口と比べて病気になりやすくなり,入院率が高くなり,若くして亡くなるようになる.ホームレス状態の人々の平均寿命は42歳~52歳である.ホームレス状態の子どもは非常に病気になりやすく,学習や行動面での問題を多く抱えることになる.収入が足りないことと,住める家がないことが,ホームレス状態になる主な理由である.心身ともに複雑かつ進行した問題を抱え,それが薬物やアルコールの乱用でさらに深刻なものとなり,さらに経済面,社会面での問題(例:家がない,適切な交通機関がない)が合わさるというホームレス状態特有の問題が,ヘルスケアシステム,地域社会,政府に突き付けられている.統合された多職種ヘルスケアチームが,アウトリーチ活動を行いながら,地方あるいは州の機関と協働することが,このような人々のケアの質を担保し,自己充足感を得る助けとなるために最も適している.家庭医は,ホームレス状態の人々に必要なものをマネージメントし,継続的なケアを提供し,多職種チームのリーダーとなるのに適している.


 ホームレス状態とは,毎日住むような家がないことをさし,路上だけでなくシェルターなどの施設や立ち入り禁止の建物,車などに住んでいる場合や,ほかの不安定または長続きしない状況にいる場合も含まれる.やむなく友達や親族の家を転々とする場合や,出所後や退院後に帰ることのできる安定した住居がない場合もホームレス状態とみなされることがある.


人口統計
 男性でも女性でも子どもでも,あらゆる人種,民族の人々が,ホームレス状態になりうる.アメリカではどの年度でも,約300万人,人口の1%がホームレス状態となっている.2013年は,どの夜も61万人がホームレス状態にいて,そのうち約36%が家族単位であり,約35%の安全が確保されていなかった.たいていの場合,ホームレス状態は数日から数週間と一時的なものである.

 過去30年にわたり,貧困の増大と住むことができる住居のさらなる不足がホームレス状態の増加を主に招いてきた.2009年の調査では,個人単位では14.3%,世帯単位では10.5%で収入が貧困レベルを下回っており,4620万人のアメリカ人が,経済的,医学的な問題が一度でも起これば生活が破綻しホームレス状態になる危険にあることが判明した.ホームレス状態と関連する経済的,社会的要因としては,不安定な雇用,低賃金,公的扶助の拒否,精神疾患患者の退院や退所,退役軍人,安価な住宅の欠如,低い教育水準,ヘルスケアを受けられないことがあげられる.このような要因がどれかひとつでもあると,アルコールや薬物の乱用,家庭内暴力,身体あるいは精神の疾患,虐待やネグレクトと結びつくことで,ホームレス状態に陥ってしまいかねない.