2026年8月29日土曜日

電子タバコをどう考える?

 Vasooja D, Peters K, Wasan D, Najafi E, Warnapala M, Baker Y, et al. GPs' perspectives on assessing adolescent vaping among individuals without prior smoking history: a qualitative study within primary care. BJGP Open. 2025 Nov 19;BJGPO.2025.0207. doi:10.3399/BJGPO.2025.0207. 

https://bjgpopen.org/content/early/2026/08/24/BJGPO.2025.0207


背景

 現在、喫煙経験のない青年や若年成人の間でも、電子タバコを使用する人が増えている。GPは、電子タバコ使用について適切にスクリーニングし、助言を行う必要がある。電子タバコの使用は、ニコチン依存、呼吸器症状、心血管系への影響と関連している。長期的なデータが限られていることから、長期間使用する人に対するリスクや不確実性はさらに大きくなっている。青年・若年成人の電子タバコ使用者に対するGPの助言を導くエビデンスは、日常診療において依然として乏しい。

目的

 電子タバコ使用の流行への対応について、GPがどのように考えているか、どの程度準備ができているか、どのような課題を抱えているか、また個人レベルおよび国レベルでどのような改善が可能かを明らかにすること。

研究デザイン・セッティング

 英国のGPを対象とした半構造化インタビューによる質的研究。

方法

 英国全土のPrimary Care Networks(PCN)を通じて、半構造化インタビューへの参加を募集した。英国のGPの人口統計学的特徴を反映するようpurposive samplingを用いて参加者を選定した。インタビューは2024年4~5月に英国各地で実施し、11人(n=11)でデータ飽和に達した。インタビューは逐語録を作成してNVivo 10に取り込み、Gioia法を用いてテーマ分析を行った。 

結果

 4つの統合的次元、11の二次テーマ、29の一次概念が抽出された。変化を促す要因として、若者の電子タバコ使用に対する懸念の高まりが中心となっていた。一方、現在の診療では、知識が限られており、患者への助言にもばらつきがみられた。障壁として、ガイダンス、利用可能なサービス、診療時間の不足が挙げられた。改善策としては、教育の充実、デジタルツールの活用、関係者の関与が重視された。 

結論

 本研究の結果は、青年および若年成人の非喫煙者における電子タバコ使用の増加に対応するため、早急な介入が必要であることを示している。一部のGPは診療を改善しようという意欲を持っている一方、現在得られているエビデンスが限られ、内容も一貫していないため、不確実性を感じているGPもいる。効果的な解決策には、プライマリ・ケアだけでなく、他の医療専門職や主要な関係者も含めた取り組みが必要である。


感想

アブストだけよめば、軽く流してしまいがちになりますが、論文じっくり読んだら面白かったです。質的解析の過程やreflexivityについてかなり詳細に記述してあります。コーディングの過程もわかりやすくsupplementalに載っています。ここまで詳しく記載した論文を今まで読んだことがなく、新たな見本とすべき論文だと思いました。

Gioia法が初見だったのでしらべました。

参加者の発言→1st-order concepts(参加者に近い概念)→2nd-order themes(研究者による解釈)→Aggregate dimensions(より抽象的な概念)という「データから理論へ」の階層構造を作る方法とのことで、日本のSCATに似てるなという印象です。

「参加者が意味づけた概念」と「研究者が理論的に解釈した概念」を明確に区別して記述するので、分析過程を比較的透明に示すことができ、新しい概念モデルや理論をデータから帰納的に構築したい場合に使えそうです。

これを使うと、各コンセプトがどれだけ生み出されているかを数えることもできるので、データの飽和についてもかなり明確に示すことができます。

結論として、まだ探索されていない研究課題について、一般的で包括的な結論を得たい場合には有用だなと思いました。私が使うかどうかは…私のRQとは合わないことが多いようなきがしています。ちょうど合致するRQを思いついたときに使いたいですね。

2026年8月28日金曜日

personal continuityの測定法

 Sidaway-Lee K, Pereira Gray D, Fearn-Smith J, Buick A, Engamba S, Khan N, et al. Development of a novel GP continuity measurement for practices without personal lists. Br J Gen Pract. 2026 Apr 2;BJGP.2025.0624. doi:10.3399/BJGP.2025.0624. https://bjgp.org/content/early/2026/08/23/BJGP.2025.0624


背景

 GPによるケアの継続性を改善すべきであることは広く認識されている。そのためには、すべての診療所で利用可能な継続性の指標が必要である。しかし、これまでの指標には限界がある。

目的

 ケアの継続性を評価する、より優れた指標を開発し、既存の指標とその性能を比較すること。

研究デザイン・セッティング

 2つのGP診療所において、監査データを用いて1年間実施したパイロット研究。

方法

 修正版SLICC(modified St Leonard's Index of Continuity of Care:mSLICC)を開発し、毎月算出した。そして、St Leonard's Index of Continuity of Care(SLICC)、1年間のBice-Boxerman(BB)指標、およびUsual Provider of Care Index(UPC)と比較した。指標に含まれる患者および診療予約の割合を算出し、患者を年齢、3年間の診療予約回数、フレイルのカテゴリー別に分類した。

結果

 2つの診療所において、mSLICCには29,127件の診療予約のうち19,840件(68.1%)が含まれ、診療予約のある患者の平均65.2%(SD 6.4%)が対象となった。UPC/BBでは21,032件(72.2%)の診療予約と、診療予約のある9,924人の患者のうち4,096人(41.2%)が対象となった。

診療所Aでは、mSLICCは52.0%、SLICCは57.1%、平均UPCは0.63(95% CI 0.62–0.64)、平均BBは0.41(95% CI 0.40–0.43)であった。診療所Bでは、mSLICCは25.7%、SLICCは25.1%、平均UPCは0.50(95% CI 0.49–0.51)、平均BBは0.23(95% CI 0.22–0.25)であった。mSLICCはSLICCと強く相関していた(r=0.98、P<0.001)。

結論

 mSLICCは、ケアの継続性を毎月評価するための新しい指標である。BBやUPCと比較して限界が少なく、特定の担当GP(named GP)を必要としない。十分なITリソースがあれば、担当GPの個人リスト制(personal lists)を採用していない診療所でも、mSLICCを用いてケアの継続性を測定することが可能である。


感想

新たな継続性の指標を提案している論文です。

SLICCは、特定のかかりつけ医との継続性を測る指標です。ある患者がGPを10回受診したとして、何回「特定の個人のかかりつけ医」を受診したかを算出します。非常にわかりやすいですが、担当GP制がない診療所では使いにくいという課題がありました。

mSLICCは、過去2年間に最も多く診察したGPを実質的な担当GPとみなすことで、この課題を解決しようとしました。そして、相関がかなり高かったということで筆者たちはこの測定が妥当であると主張しています。

なお、UPCは、患者の受診のうち、最も多く診察した医師を受診した割合を示す指標で、BBは、患者の全受診回数と、各医師への受診回数の分布から継続性を評価する指標です。


研究を行った2つの診療所は担当GP制であり、それならSLICCとmSLICCがほぼ一致するのは当たり前では?という気がしました。まあでも、personal continuityを測定しようと思ったらいずれにせよこういう算出法になるわけで、研究対象を広げることができるという意味で価値があるのだと思います。家庭医療の基礎研究ですね。ほかのcontinuityについては、それぞれ測定指標があるのだろうと思います。

2026年8月27日木曜日

手の変形性関節炎

 Kaya O, van Baalen E, Strijkers R, Kloppenburg M, Selles R, Bierma-Zeinstra S, et al. Patients' perceptions of hand osteoarthritis care in Dutch general practice. Br J Gen Pract. 2026 Aug 25. doi:10.3399/BJGP.2025.0768. https://bjgp.org/content/early/2026/08/25/BJGP.2025.0768


背景

手の変形性関節症(osteoarthritis: OA)は、OAの中で2番目に頻度の高い病型であり、しばしば疼痛、機能低下、生活の質(QOL)の低下を伴う。その有病率の高さにもかかわらず、手のOA患者は、この疾患が通常管理されるプライマリ・ケアにおいて、満たされていないニーズがあることをしばしば訴えている。


目的

 プライマリ・ケアにおける手のOAの管理について患者の視点を明らかにし、ケアに対する主要な障壁および促進要因を特定すること。


研究デザイン・セッティング

 オランダの手のOA患者を対象とした半構造化インタビューに基づく質的研究。


方法

 フレームワークに基づくインタビューガイドを用いて、16人の患者に半構造化インタビューを実施した。患者はpurposive samplingによって募集した。テーマ分析により主要なテーマを特定した。さらに、51人の患者が回答した追跡質問票を用いて、回答者による妥当性確認(respondent validation)を行った。


結果

 7つの障壁と3つの促進要因が明らかになった。GPによる指導の質、手のOAに関する情報や説明の提供状況、治療の有効性に対する認識は、それらが不十分な場合には障壁となり、十分な場合には促進要因となることが示された。その他の障壁として、手のOAに対する意欲を削ぐような態度、医療提供者間の連携不足、利用できる治療選択肢が限られているという認識、そして患者自身が特定の治療を受けることに消極的であることが挙げられた。


結論

 手のOA患者は、プライマリ・ケアにおいて複数の障壁に直面しており、その多くはGPによるコミュニケーション、支援、医療提供者間の調整に関連している。患者は、積極的に関与し、日常生活の中で自分の病状を管理するための実践的な手段や指導を提供してくれるGPを求めている。GPがこの役割を果たせるようにするためには、研修の充実、より明確な臨床ガイドライン、そして利用しやすい患者教育資料が必要である。これらの取り組みにより、より先回りした患者中心のケアが可能となり、手のOA患者のアウトカム改善につながる可能性がある。


感想

BJGPはこの手の、common diseaseのプライマリ・ケア管理に関する患者(または医療者)の視点を探る質的研究をたくさん採用するんですよね。着眼点が鋭い論文は大変に面白いのですが、この研究に関しては結果が総花的で、薄味になっている印象です。自分なら何をテーマにするかなぁ。ACNESを診断することが多いので、ACNESの確定診断を付けた患者に協力してもらうかなあ。人数集まるかなぁ。あと、ぱっと思いつくのはリブレですけど、先行研究ありそうなんですよね。

2026年8月26日水曜日

プライマリ・ケアでのCKD管理

 Veighey K, Teasdale E, Myall M, Henaghan-Sykes K, Blakeman T, Ibrahim K, Raut B, Everitt H, Fraser SDS. Understanding risk stratification of chronic kidney disease: a qualitative study in primary care. Br J Gen Pract. 2026 Aug 24. doi:10.3399/BJGP.2025.0802.https://bjgp.org/content/early/2026/08/23/BJGP.2025.0802


背景

慢性腎臓病(chronic kidney disease: CKD)は、英国イングランドの成人のおよそ10%にみられる。このうち約1%が腎不全へ進行し、健康関連QOLに大きな影響を及ぼすとともに、医療費の増大にもつながっている。CKDは心血管疾患リスクの上昇とも関連している。近年、CKD患者の転帰を改善する新たな治療法が登場しており、効果的なリスク層別化の必要性が高まっている。


目的

プライマリ・ケアチームがCKDのリスク層別化についてどのように考え、どのような経験をしているのかを明らかにする。


研究デザイン・実施施設

イングランド南部、南ロンドン、ヨークシャーのGP診療所を対象とした質的インタビューおよびフォーカスグループ研究。


方法

2024年1月から2025年1月にかけて、20の診療所を対象に、GP、薬剤師、診療看護師に対する半構造化インタビュー26件と、診療チームを対象としたフォーカスグループ4回(参加者31名)を実施した。フォーカスグループには、臨床スタッフだけでなく、事務職員やマネジメントスタッフも参加した。研究はNormalisation Process Theory(NPT:実践の定着・標準化を説明する理論)を踏まえて実施し、テーマ分析を用いてデータを分析した。


結果

以下の4つの主要なテーマが明らかになった。

診断基準およびリスク層別化ツールに関する認識

CKDのコーディング(電子カルテ等への診断情報の登録)とリスクについて話し合うことの価値

CKDのリスク層別化を妨げる障壁

CKDのリスク層別化を改善するための方法

診断基準については、すべての参加者が認識していた一方、リスク層別化ツールについての認識は低かった。CKDを電子カルテ等にコーディングすることは、医療専門職にとっては有用であると認識されていたが、患者にとっての有用性は低いと考えられていた。また、リスクについて患者と話し合うことにより、患者の不安を増大させたり、過剰な医療化(overmedicalisation)につながったりする可能性が懸念されていた。さらに、時間的制約や業務量の多さ、インセンティブの不足が、CKDのリスク層別化を妨げる主要な障壁として認識されていた。

改善策として、医療専門職への教育の充実、ガイドラインの整備、診療経路(pathway)の改善、テクノロジーや自動化の活用などが挙げられた。


結論

プライマリ・ケアにおけるCKDへの認識は高いものの、業務量の多さ、時間的制約、患者の不安や過剰な医療化への懸念が、十分なリスク層別化の実施を妨げている可能性がある。診療プロセスを改善するとともに、患者との効果的なコミュニケーションを促進することによって、CKDのケアを改善できる可能性がある。


感想

確かにそうだなーという印象で、肌感覚を説明してくれています。Cre値ここ数年動いていないし、敢えてこれを取り上げても患者の不安をかきたてるだけだろうし、これでSGLT-2I入れるのはさすがにovermedicalisationだよなー、とかよく思います。適切なケースには導入しているつもりですが。

2026年8月25日火曜日

発育阻害とケアラーの知識

 Rachmawati R,  Nazarina, Setyawati B, et al. Bridging the knowledge divide: a national cross-sectional analysis of urban-rural disparities in the stunting knowledge index among mothers/caregivers in Indonesia. Korean J Fam Med.2026 https://kjfm.or.kr/journal/view.php?number=4902


背景

インドネシアでは、発育阻害による深刻な公衆衛生危機が続いている。母親の知識は、栄養習慣と結果の重要な推進力である。本研究は、母親/介護者の発育阻害知識指数(SKI)を開発し、都市部と農村部の知識の格差を分析し、これらの格差を引き起こす主要な決定要因を特定することを目的とした。


方法

この横断研究では、294,538人の母親と介護者を対象とした2024年インドネシア栄養状態調査のデータポイントを分析した。発育阻害に関する知識、社会人口統計学的特性、母親と介護者の特性、子供の特性、居住地域、および母親の健康知識と利用に関連する変数に関するデータは、母親へのインタビューを通じて収集された。年齢別身長Zスコア(HAZ)は、年齢と身長の測定値を使用して計算された。知識レベルは、低、中、高に分類された構築されたSKIを使用して測定された。カイ二乗検定と多変量ロジスティック回帰を用いて、低SKIの予測因子と発育阻害のリスクを特定した。


結果

低SKIスコアの有病率は農村部で有意に高く、両地域において母親の教育が低SKIスコアの最も強い決定因子であった。農村部では、正式な保健情報へのアクセスが限られていること(例:母子保健手帳がない)が主な予測因子であった。低SKIは発育阻害リスクのオッズ上昇と関連していた(都市部:調整オッズ比[aOR]、1.617;農村部:aOR、1.576)が、発育阻害の長期的な影響に対する高い認識は有意な保護効果をもたらした。


結論

都市部と農村部の知識格差は、教育水準が低く保健サービスの利用が限られている介護者に集中していた。介入は地域に合わせて調整し、教育水準の低い介護者を対象とし、発育阻害の長期的な影響を強調して予防行動を促進する必要がある。


感想

SKIを開発したとありますが、筆者たちが文献をもとに作成したものだそうです。こういう知識を測定する質問紙ってどうやってvalidateするものなのか気になったので勉強してみました。

あくまで一例ですが…

・内容妥当性:専門家パネルに、各質問の関連性、包括性、明快さなどを判断(content validity indexなどを算出したり)

・インタビュー:対象者10~20人程度にthink-aloudやcognitive interviewを行う

・パイロット研究:各項目について、難易度、弁別性、天井効果、分布などを確認 ITTなど

・Known-groups validity:専門家や一般人など異なる集団での比較

・Test-retest:ICCなどで再現性を確認

・可能なら外的妥当性の確認

という感じなのですね。大変だ…

2026年8月24日月曜日

片頭痛の診断と治療

 Watson DP, Pawinski R, Czachorowski M, Araghi M, Williams AM, Randall R, Camidge L, Rottier E, Gowman H, Law S, O'Neil G. Diagnosis and management of migraine in adults: a population-based study in England. BJGP Open. 2026 Aug 11:BJGPO.2025.0143. https://bjgpopen.org/content/early/2026/08/09/BJGPO.2025.0143


背景

これまでの研究では、片頭痛はプライマリケアにおいて診断不足および治療不足であることが明らかになっている。


目的

イングランドにおける片頭痛患者の診断および治療パターンを明らかにすること。


デザインとセッティング

臨床診療研究データリンク(CPRD)Aurumと2019年多重剥奪指数データセットをリンクさせた後向きコホート研究。


方法

本研究の対象集団は、2012年9月から2023年5月(指標イベント)までに18歳以上で片頭痛のため家庭医診療所を受診した患者とした。指標イベントから12か月後に処方された薬剤を、社会人口統計学的層別化(年齢、性別、民族、貧困度)ごとに比較した。薬剤の過剰処方は、3か月連続で10日分以上(オピオイドおよびトリプタン)または15日分以上(鎮痛剤、解熱剤、非ステロイド性抗炎症薬[NSAID])の供給と定義した。


結果

合計で、イングランドのプライマリケアを受診した頭痛または片頭痛の患者1,534,807人が観察された。このうち、876,233人(57.1%)は未分化または分類不能の頭痛とコード化され、606,928人(39.5%)は一次性頭痛障害とコード化された。一次性頭痛障害の中で最も多くコード化されたのは片頭痛で、成人476,191人(78.5%)が、その後の分析に使用された最終サンプルを構成した。片頭痛コホートのうち、予防薬を処方されたのはわずか36.5%であった。処方された用量に関して、アミトリプチリンを処方された人の17.9%、プロプラノロールを処方された人の31.3%、トピラマートを処方された人の31.2%が、スコットランド大学間ガイドラインネットワーク(SIGN)155および国立医療技術評価機構(NICE)臨床知識要約(CKS)の推奨用量に達していた。片頭痛患者全体の62.6%に急性期治療薬が処方されており、内訳はトリプタンが36.6%、オピオイドが9.6%であった。薬剤の過剰使用の可能性については、国際頭痛分類第3版(ICHD-3)の定義に基づくと、トリプタン使用者の23.6%、オピオイド使用者の44.3%に薬剤の過剰処方が見られた。


結論

プライマリケアを受診する頭痛の大部分は、鑑別診断がつかないか分類されないままである。片頭痛と診断された患者のうち、トリプタン製剤または予防薬を処方されるのは約3分の1に過ぎない。急性期治療薬の過剰処方はよく見られ、予防薬の最適化は不十分である。


感想

プライマリ・ケアでは片頭痛患者に予防薬を出すことはそこまでなくてもいいような… アセトアミノフェンやロキソニンで対応可能ならそれに越したことはないと思っています。ただ、急性期の鎮痛薬が過剰処方されているというのは確かに問題です。診断はなるべくつけるようにはしていますが、分類不能が一定いるのは仕方ないことだとは思います。

2026年8月22日土曜日

入院患者の鎮静剤処方

 Burry LD, Rose L, Pinto R, Williamson DR, Hill A, Scales D, Bronskill SE, Fowler R, Dolovich L, Fu L, Bell CM, Wunsch H. Association between sedative prescriptions after hospital discharge and falls and other adverse events in older adults: a population-based cohort study. CMAJ. 2026 Jun 28;198(25):E958-E968. doi: 10.1503/cmaj.251965. PMID: 42373114; PMCID: PMC13309139.


背景:入院後の鎮静剤処方が患者の予後不良と関連しているかどうかは不明である。本研究では、高齢者における退院後30日以内の鎮静剤に関連する有害事象の発生率とリスクを明らかにすることを目的とした。


方法:オンタリオ州の病院から生存退院した高齢者(66歳以上)を対象とした集団ベースのコホート研究を実施した(2003年から2023年)。退院後7日以内に処方された鎮静剤(ベンゾジアゼピン、抗うつ鎮静剤、または抗精神病薬)と転倒(骨折の有無を問わず)、救急外来(ED)受診、および再入院との関連性を評価した。退院後に処方された鎮静剤とアウトカムとの関連性を評価するために、死亡以外の結果については原因別比例ハザード回帰、死亡についてはCox比例ハザードモデルを使用した。入院前の鎮静剤処方との相互作用があったため、入院前の鎮静剤未投与状態と投与済み状態に基づいて結果を層別化した。


結果: 1,868,484人の高齢者(平均年齢77歳、女性52.1%)のうち、13.2%が退院後に鎮静剤の処方箋を受け取った。これらの患者のうち、31.0%は入院前に鎮静剤を服用したことがなかった。転倒は1.6%(n = 30,626)、救急外来受診は21.3%(n = 397,402)、再入院は12.4%(n = 231,191)、死亡は3.8%(n = 70,661)に発生した。退院後に鎮静剤の処方箋を受け取った患者(処方箋を受け取らなかった患者と比較)で、入院前に鎮静剤を服用したことがなかった患者では、すべての転帰について調整ハザード比(HR)が増加した(転倒:1.20、95%信頼区間[CI] 1.13~1.26、救急外来受診:1.20、95% CI 1.19~1.22、再入院:1.20、95% CI 1.17~1.22、死亡:1.78、95% CI 1.73~1.83)。入院前に鎮静剤に曝露された患者では、死亡のリスクが増加したが(調整HR 1.08、95% CI 1.05~1.11)、他の転帰については増加しなかった。鎮静剤を服用したことのない高齢者においては、ベンゾジアゼピン系薬剤はあらゆる転帰のリスク増加と関連があり、抗精神病薬は転倒および死亡のリスク増加と関連があり、抗うつ鎮静剤は転倒のリスク減少と関連があった。


解釈:退院後7日以内に新たに処方された鎮静剤は、退院後30日以内の転倒、救急外来受診、入院、死亡のリスク増加と関連しており、そのリスクは鎮静剤の種類によって異なっていた。これらの知見は、カナダの高齢者に対する入院中の薬剤見直しと転倒リスク評価において重要な意味を持つ。


感想

入院中に新たにベンゾ、抗精神病薬を開始した場合、退院後も服用継続が必要なのかしっかり考えるべきであり、漫然と開始し漫然と継続してしまったら患者に明らかに害である、という解釈をしました。入院診療を行っている身としては重要なデータだと思います。

2026年8月21日金曜日

聴覚障害者の医療アクセス

Levy BB, Teo K, Kapsack A, Karim A, MacKenzie K, Etheridge R, Legere L, Harth T, Kalocsai C. Experiences of culturally Deaf people with health care access and navigation in Ontario, Canada: a qualitative co-design study. CMAJ. 2026 Aug 9;198(28):E1098-E1109. doi: 10.1503/cmaj.251945. PMID: 42575538.


背景:公平な医療へのアクセスは、包摂的で公正な社会の礎石であるが、聴覚障害のある患者は、カナダの医療制度において、安全性、信頼性、そして健康状態を損なう根深い障壁に依然として直面している。本研究では、文化的に聴覚障害のあるコミュニティのメンバーが医療にアクセスし、医療制度を利用する際の経験を明らかにし、公平かつ文化的に安全な医療を実現するための優先事項を特定することを目的とした。


方法:私たちは、聴覚障害者コミュニティのメンバーにサービスを提供する非営利団体であるDeaf Services Canadaと提携し、批判的解釈パラダイムに基づいた質的共同創造研究を実施した。カナダのオンタリオ州の都市部、農村地域、オンタリオ州北部など、複数の地域から参加者を募集した。聴覚障害のある成人、家族、通訳者、アドボケーターを募集し、アメリカ手話(ASL)と英語の通訳者を用いて8つのフォーカスグループを実施した。私たちは、聴覚障害の社会文化的モデルに基づいて、省察的なテーマ分析を行った。コーディングとテーマ開発は、反復的な議論を通じて共同で実施し、分析プロセスが多様な視点を反映し、信頼性を強化し、聴覚障害者コミュニティの経験に責任を持つようにした。


結果:参加者は23名であった。うち14名が文化的にろう者、9名が聴覚者で、家族(n =7)、通訳者(n =5)、アドボケーター(n =7)など、役割が重複していた。5つの共通するテーマが浮かび上がった。医療へのアクセス制限は、聴覚と音声言語を優先するシステムに組み込まれている。予約プロセスにおける構造的な障壁が排除を助長している。通訳サービスは一貫して評価・実施されておらず、コミュニケーションを阻害している。医療チーム内のコミュニケーションの障害が公平な医療を阻害している。そして、制度的な障壁にもかかわらず、主体性と適応戦略が持続している。


解釈:ろう者コミュニティの経験は、話し言葉と聴覚の規範が、構造的にも対人的にも、医療へのアクセスと利用をいかに形成し、制約しているかを浮き彫りにしている。医療従事者の教育にろう文化への配慮を組み込み、通訳サービスの提供を標準化し、文化的に安全なコミュニケーション経路を統合することは、この認識不足の集団の健康における公平性を推進するための重要な第一歩である。


感想

個人的に今年3本の指に入る素晴らしい研究。こういう研究が実施できるという質的研究の魅力を思う存分堪能できます。その問いを問うこと自体に価値のある疑問を、当事者が参加している研究チームで、適切な理論を用いて体験を明らかにし、それを実際の社会に還元しようとしている研究です。

2026年8月20日木曜日

変形性股関節炎:BMJレビュー

 Hoveidaei AH, Al-Obaedi O, Arvin A, Johnston B, Ravi B. Assessing, diagnosing, and managing hip osteoarthritis in primary care. BMJ. 2026 Aug 10;394:e258168. https://www.bmj.com/content/394/bmj-2026-258168


股関節の変形性関節症(OA)

・股関節や鼠径部の痛みを呈する

・朝のこわばりはないか、あっても短時間

・診察時の可動域の制限が診断に最も資する。


・股関節OAは臨床診断である。X線写真が正常であってもOAを除外できず、臨床症状がない状態でX線写真がOAを示唆する所見であっても、確定できない。

・第一選択は、患者教育、運動、減量、必要に応じて経口鎮痛剤の投与が挙げられる。

・症状が生活の質を低下させるなら専門医による診察。


・膝または股関節OAの患者182人を対象に行われた横断調査では、推奨されている非外科的治療の全てを受けたと報告した患者はわずか6%


・男性よりも女性にやや多い。肥満、過去の関節損傷、股関節形成不全などの先天性異常、大腿臼蓋インピンジメント、高齢などがリスク


・主な症状は、歩行、ハイキング、階段昇降などの体重負荷のかかる活動によって悪化する股関節and/or鼠径部の疼痛です。

・鼠径部に最も多い。鈍い痛み。大腿外側部や臀部上部に放散することも。

・痛みには、60分未満で治まる朝のこわばりや可動域の制限が伴うことが多い


・発症初期は、X線写真に異常が見られないにもかかわらず症状が現れる場合がある。

・早期OA患者588人を対象とした前向きコホート研究では、X線での所見あり患者は、10年間で19%から49%に増加した。

・しかし、股関節置換術を必要とした患者は12%にとどまり、残りの患者(非外科的治療)は追跡期間中、痛みと活動レベルが安定していた。


・進行期の症状は患者の生活の質を著しく低下させる可能性があり、臨床上の焦点は症状のコントロールと関節置換へと移る。

・鑑別は多岐にわたるが、多いのは神経根症、大転子痛症候群、鼠径ヘルニア、骨盤内疾患


・重度の内側大腿痛は、まれだが(患者の2.7%)、股関節OAに非常に特異的(感度:12%、特異度:98%、LR+:7.8、LR-:0.89)

・患者の26~36%では反対側の関節痛も発症する


・階段昇降や坂道下りなどの動作中に痛みが悪化する場合は、股関節OAの可能性が中程度に示唆される(感度と特異度はともに約68%)。

・歩行時の疼痛と座位時の症状緩和は、感度が高い(80~97%および92%)が特異度は低い(12~34%および33%)

・膝OAの既往歴は、感度33%、特異度84%(LR+:2.1、LR-:0.80)である。

・家族歴は、感度は低い(34%)が、特異度は84%(LR+:2.1、LR-:0.79)。


・しかし、診断に必要なのは病歴よりも身体診察所見

・可動域検査中の疼痛も重要だが、可動域制限のほうが大事。

・股関節内転制限(感度:80%、特異度:81%、PLR:4.2、NLR:0.25)

・内旋制限(15度未満、感度:66%、特異度:79%、PLR:3.2、NLR:0.43)、

・内旋時の疼痛(感度:82~88%、特異度:38~39%、PLR:1.4、NLR:0.31~0.45)


・外転または内転時の鼠径部痛は、感度33%だが、特異度94%。


・関節腔の狭小化などの初期の画像所見は、今後5~10年の間に症状のある股関節OAを発症する人を予測する能力も低い


・第一選択は、運動、患者教育、減量

・痛みの許容範囲内で、低負荷の有酸素運動(例:ウォーキング、サイクリング、水泳)など、継続可能なあらゆる身体活動に取り組むよう促す。

・週に最低45分の中強度運動を行うよう指導し、可能であれば週150分を目指すよう勧める。

・運動開始時に関節痛が一時的に増悪する可能性があることを患者に伝える。

・10件のRCTを対象としたコクランレビューでは、股関節OA患者において運動が痛みを28%軽減し、身体機能を42%改善することが示された。


・階段昇降などの刺激の強い活動は避ける。

・高負荷の運動を低負荷の運動に置き換える

・長時間立ったり歩いたりすることを減らす

・過体重または肥満の患者には減量を促す

・体重について話し合う前に許可を求め、すべての症状を過体重や肥満のみに起因するものと決めつけることは避け、体重管理に取り組む前に患者の主訴が適切に評価され、管理されていることを確認すること。

・局所的な筋力強化(股関節外転筋、伸筋、外旋筋などを含む)を有酸素運動と組み合わせる。


・ 3 か月以内に十分な症状緩和をもたらさない場合、または患者の症状の重症度を考慮すると不十分な場合は、第一選択治療を補完する薬物療法を検討する。薬物療法開始後 3 か月以内に患者を再評価する

・NSAIDsが第一選択の薬物療法

・ネットワークメタアナリシスによると、ジクロフェナクとエトリコキシブが股関節OAの治療に最も効果的な経口NSAIDである

・外用製剤は胃腸障害のリスクは低いものの、浸透性が限られているため股関節への使用には適しておらず、経口NSAIDの使用が必要となる。

・NSAIDが禁忌、耐容性がない、または効果がない場合は、短期的な症状緩和のためにアセトアミノフェンを検討するが、効果は限定的。


・ここまでで効果乏しければ専門医紹介

・THAは効果高いが、術後4年までで、患者の27%が何らかの程度の術後疼痛が持続する。約6%は重度から極度の持続性疼痛。

・BMI高値と抑うつは、THA後2~5年後の軽度から重度の疼痛の潜在的な予測因子


・新たな治療法として、GLP-1による減量や、タネズマブによる疼痛管理が現在検証中。


感想

特に初期はX線と診断が必ずしも一致しない、疼痛が進行せず経過する患者が一定数いる、疼痛の部位が必ずしも股関節とは限らない、あたりが重要ポイントだと思いました。

2026年8月19日水曜日

高齢認知症患者は入院すると死亡が増えるのか

Ikesu R, Mayeda ER, McGarry K, Nianogo RA, Ramirez CM, Tsugawa Y. Estimating the Effect of Hospital Admission on Health Care Outcomes and Spending Among Persons With Dementia : A Quasi-experimental Study. Ann Intern Med. 2026 Jul;179(7):948-957. doi: 10.7326/ANNALS-25-03725. https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/ANNALS-25-03725


背景:認知症患者にとって、ケア環境の変化は混乱を招く可能性があるため、入院は身体機能と認知機能に悪影響を及ぼす可能性がある。しかし、入院が患者の転帰や医療費に及ぼす影響については、依然としてほとんど解明されていない。

目的:障害者における入院が健康状態および医療費に及ぼす影響を推定する。

デザイン:救急医の入院傾向を操作変数として用いる準実験的操作変数法。

設定:アメリカ合衆国。

患者:2017年から2019年の間に救急外来を受診した、認知症を患う66歳以上のメディケア出来高払い制度の受給者。

測定:救急外来受診後30日および90日以内の死亡、入院日数(初回入院を除く)、および医療費(初回救急外来受診および入院を除く)。

結果:分析対象となった872,085件の救急外来受診(女性62.9%、平均年齢83.1歳)のうち、482,208件(55.3%)が入院に至った。入院が30日死亡率(調整リスク差、-2.6パーセントポイント[pp][95%信頼区間、-5.2~0.1pp])または入院日数(調整差、0.1日[信頼区間、-0.2~0.5日])と関連しているという証拠はなかった。入院は30日間の医療費の増加(調整差、$2,547[信頼区間、$1,390~$3,703])と関連していた。90日後の結果についても同様の傾向が見られた。

制限:残存交絡。

結論:救急外来を受診した認知症のメディケア受給者において、入院が死亡率と関連しているという証拠は認められなかった。従来の統計基準では、入院による30日死亡率の5.2ポイント低下から0.1ポイント上昇までの影響は、データと非常に整合性が取れていた。一方、入院は医療費の増加と関連していた。

感想

高齢認知症患者でせん妄を防ぐために入院を避けるという意思決定はよくありますが、それが妥当なものなのかを検証する一つの重要なエビデンスだと思います。すくなくとも、入院すると死亡が増える、とはいえないという解釈かと思います。もちろん日本か米国かの違いもありますし、死亡以外のアウトカムも重要なので、臨床判断は丁寧にしないといけませんが。

2026年8月18日火曜日

介護者と被介護者のペア介入

 Arakelyan S, Gilarova M, Ding M, et al. Effectiveness of dyadic interventions in improving outcomes for adults with multiple long-term conditions and/or frailty and their informal carers: A systematic review. The Lancet Healthy Longevity, 2026; 0 https://www.thelancet.com/journals/lanhl/article/PIIS2666-7568(26)00059-0/fulltext


介護者と被介護者のペアを対象とした二者介入は、単一疾患における心理社会的アウトカムの改善に効果的だが、同様の介入が複数の慢性疾患や虚弱の状況で有益かどうかは不明である。このシステマティックレビューでは、複数の慢性疾患または虚弱、あるいはその両方を抱える55歳以上の成人とその非公式介護者のアウトカム改善におけるコミュニティ二者介入の有効性に関するエビデンスを統合した。2010年1月1日から2025年9月25日までに発表された実験研究および準実験研究を6つのデータベースで検索した。スクリーニングされた5284件の記録のうち、総計7件のオリジナルトライアル、計3630組について報告した、8件のランダム化比較試験(7件はバイアスのリスクが中程度)が採用された。ペア介入は、ケアを受ける人の救急外来受診、入院再発、機能低下の減少、および介護者の介護負担の軽減に一定の効果を示したが(エビデンスの確実性は低い)、ケアを受ける人と介護者の両方において、生活の質(エビデンスの確実性は低い)や精神的健康状態(エビデンスの確実性は極めて低い)にはほとんど、あるいは全く効果が見られなかった。ケアの社会的側面や死亡率への影響を評価した試験はなかった。

感想複雑性が対象のRCTだと、なかなかにバイアスがつきまとってしまうのでしょうか。確かに臨床の肌感覚から行っても、介護者と患者の両方に介入したからと言って何かが劇的に良くなるというわけではないと思います。医療ができることが限られていることを暗に示すデータなのかもしれません。コミュニティや民間セクターまで見渡したケアが必要なのでしょう。

2026年8月17日月曜日

尿路感染再発予防の話し合い

 Wilmsen MEP, cam Gestel LC, Sijbom M, et al. Identifying and addressing UTI prevention barriers in primary care: a qualitative study. BJGP Open 11 August 2026; BJGPO.2025.0230. DOI: 10.3399/BJGPO.2025.0230


背景:尿路感染症の再発率は特定の患者群で高く、身体的および精神的健康に影響を与え、抗菌薬の繰り返し使用につながる。行動療法や非抗菌薬製剤は再発を予防し、抗菌薬の必要性を減らすことができる。しかし、これらの予防策は尿路感染症ガイドラインで推奨されているにもかかわらず、しばしば十分に検討されていない。


目的:プライマリケアにおける尿路感染症予防に関する議論の阻害要因と促進要因を特定し、これらの阻害要因を克服するための戦略を特定すること。


研究デザインとセッティング:プライマリケアの現場における質的研究。


方法:尿路感染症の予防に関する話し合いの障壁と促進要因を特定するため、家庭医、医師助手、および尿路感染症の既往歴のある患者を対象に半構造化面接を実施した。演繹的内容分析を用い、理論的ドメインフレームワークに基づいて面接ガイドを作成し、データを分析した。その後、障壁を克服するための戦略を特定するためにフォーカスグループを実施した。


結果:すべての関係者にとっての主な障壁は、知識不足、予防よりも治療を優先すること、および家庭診療における時間的制約であった。さらに、家庭診療では、予防策についていつ、何を、誰が話し合うべきかに関するプロトコルが欠如していた。医療従事者はまた、患者がすでに予防に関する知識を持っており、抗菌薬を入手するためだけに受診していると思い込んでいた。主な促進要因は、患者が尿路感染症について会話を始めることであった。戦略としては、知識の向上、患者が尿路感染症について会話を始めるよう促すこと、および予防情報の普及のタイミングを最適化することなどが挙げられる。


結論:行動面、対人関係面、組織面など、様々な領域に障壁が存在するものの、それらは個々の状況に合わせた介入を行うための明確な出発点となる。これらの戦略は、尿路感染症の予防を改善し、抗菌薬の使用量を削減するための有望な方向性を示している。


感想

患者主導での話し合いがトリガーとなるんですね。医療者側から話をしないといけません。

本文によると、予防策として推奨されるのは、水分摂取量の増加、完全な排尿、クランベリー製品、膣エストロゲンだそうです。クランベリーは日本だとアクセス難しいですかね。他は大体話をすることが多いなと思いつつ、エストロゲン製剤はもっと積極的に推奨してみてもいいかもしれないなと思いました。

2026年8月16日日曜日

持続血糖モニタリングを研修医が実際に経験する

 Ohlendorf, E.B., Fifer, K.M., Gallagher, E.J. et al. The Impact of an Experience-Based Versus Traditional Continuous Glucose Monitoring Curriculum on Internal Medicine Resident Confidence and Knowledge. J GEN INTERN MED (2026). https://doi.org/10.1007/s11606-026-10687-x


背景

持続血糖モニタリング(CGM)は糖尿病治療において重要なツールですが、医療従事者の間でその使用方法に関する知識が不足している場合が少なくない。個人的にCGMを使用することで、医療従事者の知識と自信を高めることができるだろう。


目的

我々は、経験に基づいたCGMカリキュラムが、従来のカリキュラムと比較して、内科研修医の自信と知識を向上させるかどうかを評価した。


デザイン

倫理審査委員会の承認不要、前向き、無作為化教育介入試験。


参加者

内科研修医36名。


介入

研修医は、経験に基づくカリキュラム(講義、臨床実習、10日間の個人用CGM装着)または従来型カリキュラム(講義と臨床実習のみ)のいずれかに割り当てられた。


主な対策

主要評価項目:カリキュラム実施前後のアンケートで測定したCGM自信度スコアの変化。

副次評価項目:知識評価におけるカリキュラム実施後の知識問題への正答率。事前アンケートと事後アンケートの回答はマクネマー検定を用いて比較し、経験群と従来群はフィッシャーの正確確率検定を用いて比較した。質的評価項目として、CGM使用時の参加者の経験に関する自由記述式の回答を分析した。


結果

36名の研修医がカリキュラム前のアンケートに回答し、27名がカリキュラム後のアンケートに回答した(経験群n  = 13、従来群n  = 14 )。回答は23組であった。CGMの複数の領域で全体的な自信が向上した。患者がCGMセンサーを装着するのを手伝う自信は全体的に有意に向上し(p  = 0.0001)、経験群ではより大きな向上が見られた(p  = 0.0003)。スマートフォンの統合も同様のパターンを示し(経験群 vs従来群 p  = 0.012)、患者の質問に対応する自信も同様であった(経験群 vs従来群  p  = 0.012)。CGMの機能の説明(p  = 0.004)とレポートの解釈(p  = 0.004)に対する自信は全体的に向上したが、グループ間の差はなかった。知識スコアは類似していました(経験群 67 ± 12% vs 従来群 62 ± 16%)。質的なテーマとしては、患者の経験に関する洞察、処置に対する自信の向上、ライフスタイルに関するカウンセリング能力の向上、そして体験学習への支持などが挙げられた。


結論

内科研修医にCGMを実際に使用する機会を提供することで、従来のカリキュラムよりも応用スキルと患者対応スキルにおいて大きな向上が見られた。これらの結果は、研修医が現代の糖尿病治療に適切に対応できるよう、研修プログラムにCGMの実践的な使用経験を組み込むことを支持するものである。


感想

自信度スコアは単に自己申告の10段階のスコアで、知識レベルの測定は筆者たちが作成した10問の問題の正答率をみています。数が36と少ないうえに、25%脱落しています。質的データはインタビューではなく自由記述です。かなりfeasibilityの高いデザインだと思います。それでもJGIMなのは、RCTをしていること、CGMを実際に経験してみるという教育の斬新さ(最終的にモニターは個人使用の範疇で参加者たちに譲渡されています)、まがいなりにも混合研究としていること、トピックの重要性などが考慮されたのだと思います。研究者がお手本にしやすい論文だと思いました。それにしてもRCTなのに倫理審査不要ってどうなんだ?

2026年8月15日土曜日

医師の感情表現を患者はどう受け止めるか

 Staeck, R., Sauer, C., Zwahlen, M. et al. Physician Emotion and Self-disclosure in Serious Illness Conversations: Impact on Trust, Compassion, Professionalism and Comfort. J GEN INTERN MED (2026). https://doi.org/10.1007/s11606-026-10590-5


背景

医師は、プロ意識の欠如を懸念して、感情表現や個人的な自己開示を避けることが多い。重篤な疾患の治療において、患者がこうした行動をどのように受け止めるかを理解することは、コミュニケーションを円滑にする上で重要である。


客観的

医師の自己開示と感情表現が、思いやり、信頼、プロ意識、安心感といった認識にどのように影響するかを評価する。


デザイン

スイスの一般市民を対象とした人口ベースの調査に基づき、自己開示、感情表現、コミュニケーションの明確さなど、診察における11の側面を体系的に変化させた臨床シナリオ研究を実施した。データは、ランダム切片と選択された交互作用項を含む多段階線形回帰を用いて分析した。周辺平均値と95%信頼区間を報告した。


参加者

合計1572名の参加者(女性51.4%)が、それぞれ5つの短い物語を評価した。参加者は、年齢、性別、言語に関する割り当てを適用した便宜的サンプリングによって募集された。


主な対策

思いやり、信頼、プロ意識、安心感を11段階評価で評価。


主な成果

参加者の平均年齢は50.6歳(範囲:16~94歳)であった。感情表現、特に目に見える感情表現と自己開示は、共感、信頼、快適さの評価が高いことと関連していた(p  < 0.05)。一方、目に見える感情表現は、認識されたプロ意識に有意な影響を与えなかった(p  = 0.349)。有意な交互作用は、その効果が相談の状況と参加者の特性(年齢、言語、教育など)によって異なることを示していた。


結論

医師の自己開示と感情表現は、プロ意識を損なうことなく、思いやり、信頼、安心感といった患者の認識を向上させた。これらの知見は、医療文化における一般的な認識に疑問を投げかけ、こうした行動が重篤な疾患の治療における医師と患者の関係を強化する可能性を示唆している。


感想

重要な着眼点で、デザインも工夫があり面白いです。JGIMの研究っぽい感じですね。同様のデザインでいろいろ研究できそうです。

2026年8月14日金曜日

減薬に関するガイドラインのフォーマット

 Langford, A.V., Liau, S.J., Loh, S. et al. Designing Implementable Deprescribing Recommendations: A Qualitative Study of Healthcare Professional Perspectives. J GEN INTERN MED (2026). https://doi.org/10.1007/s11606-026-10679-x


背景

臨床ガイドラインには、治療開始に関する推奨事項が通常含まれているが、減薬(薬剤の減量または中止)については、あまり取り上げられていない。減薬に関する推奨事項をガイドラインに定期的に組み込むことで、ガイドラインの普及、採用、および影響力を高めることができるだろう。


目的

オーストラリアの医療従事者から、臨床ガイドラインに含めるべき減薬に関する推奨事項の望ましい内容、言語、形式についての見解を引き出す。


デザイン

半構造化面接を用いた質的調査。


参加者

医師、薬剤師、登録看護師計24名にインタビューを行った。


アプローチ

完全で明確かつ実行可能な減薬勧告とは何かについて、自由回答形式の質問が提示された。参加者には、提示された減薬勧告例の特徴のうち、有用だと感じたものとそうでないものを、その理由とともに挙げるよう求められた。ガイドライン言語・形式評価ツール(GLAFI)を用いて、テーマ別フレームワーク分析が実施された。


主な成果

3つの包括的なテーマが抽出された。

テーマ1:処方に関する推奨事項と比較して、減薬に関する推奨事項にはより高い内容とエビデンスの基準が求められること。これは、参加者が減薬は投薬開始よりも複雑であると認識していることを反映している。その結果、許容可能で、実行可能で、臨床的に有用な減薬に関する推奨事項を構成する基準がより高いものとなった。

テーマ2:明瞭さと包括性のバランス。これは、簡潔で分かりやすい推奨事項を求める参加者の要望と、詳細で包括的な減薬指導を求める参加者の要望との間の緊張関係を探るものであった。

テーマ3:減薬に関する推奨事項の最適な配置。これは、減薬に関する推奨事項の配置に関するさまざまな好みを探るもので、積極的な減薬を促進するために処方に関する推奨事項と同じ場所に配置することを好む参加者もいれば、薬剤固有のアドバイスを超えて、より広範な減薬の原則​​と戦略を含めることができるように、独立したセクションを好む参加者もいた。


結論

医療従事者は、減薬に関する推奨事項の内容、言語、形式が、実施可能性に不可欠な要素であると考えていた。減薬特有の要因、特に減薬方法の運用上の複雑さやリスクの捉え方に関する考慮事項は、GLAFIの原則の範囲を超えていた。これらの知見は、今後の減薬に関する推奨事項を改善し、減薬実施のための実施可能性フレームワークを強化する機会を浮き彫りにしている。


感想

GLAFIってなんだろうと思ったら、ガイドラインを作成するためのフォーマットが開発されているのですね。https://link.springer.com/article/10.1186/s13012-022-01219-2

推奨事項をどのように表現するかという点に着目している研究で、興味深いなと思いました。

2026年8月13日木曜日

肥満医学プログラムの評価

 Shafer, R., Shapiro, L., Carnavali, F. et al. Building an Obesity Medicine Workforce: Implementation of a Comprehensive Resident Training Pathway in an Underserved Care Environment. J GEN INTERN MED (2026). https://doi.org/10.1007/s11606-026-10693-z


背景

内科研修プログラムは、研修医が肥満を管理するための準備が不十分な場合が多い。


標的

内科研修医向けに、肥満医学に関する新たな学習経路を開発する。


設定

都市部の連邦政府認定医療センターにおける、クリニックを拠点とした体重管理プログラム。


参加者

大規模な都市型内科研修プログラムに所属する、卒後2年目および3年目の専門研修医。


プログラム概要

この1~2年間の長期肥満医学研修プログラムには、(1)基礎知識:非同期型オンラインモジュールと対面式ジャーナルクラブを通じて習得する知識、(2)実践的トレーニング:体重管理クリニックで患者グループを直接的かつ長期的にケアする能力、(3)専門能力開発:肥満医学認定資格取得のための専門要件を満たす能力が含まれる。


プログラム評価

18名の研修医がこのプログラムに参加し、プログラム実施前後のアンケートに回答した。プログラムの結果、肥満管理における自己申告による自信と診療パターンが向上した。食事と栄養に関するカウンセリング、および抗肥満薬の処方といった臨床スキルについて、100%の研修医が自信を高い/中程度と評価した。また、研修医の83%が肥満医学専門医資格試験を受験する可能性が高い/非常に高いと回答した。


議論

この斬新で包括的な肥満医学プログラムは、内科研修医の間で医師としての自信と肥満管理行動の向上を自己申告で示した。さらに、専門能力開発の要素は、研修医が肥満専門医の資格を取得するための有望な手段となるだろう。


感想

素朴なデザインですが、これでJGIM載るのですね。自己評価しかしていませんが…

2026年8月12日水曜日

有症状患者でのPSA測定

Merriel S, Nickol P, Abel GA, Hamiltom W. Diagnostic and prognostic outcomes for men with prostate cancer detected through opportunistic, asymptomatic PSA testing or symptomatic presentation to primary care: The PC3 cohort study. Br J Gen Pract. 2026.  BJGP.2026.0007. https://doi.org/10.3399/BJGP.2026.0007


背景

プライマリケアは、無症状のPSA検査後または前立腺関連症状の調査後に、前立腺がんの診断を行う主な経路となる。これまでのプライマリケアの研究では、症状と前立腺がんの診断との関連性が示唆されているが、症状の有無によって結果が異なるかどうかは不明である。


目的

プライマリケアを受診した有症状患者と無症状患者の間で、前立腺がんの病期、グレード、および死亡率を比較すること。


デザインと設定

Clinical Practice Research Datalink(CPRD)Aurumを使用した後向きコホート研究。2011年1月1日から2016年12月31日の間に、下部尿路症状、血尿、または勃起不全でプライマリケアを初めて受診した50歳以上の成人男性と、年齢、民族、および家庭医診療所でマッチングされた最大2人の無症状男性が含まれる。


方法

主な測定項目: 臨床的に重要な前立腺がん (Gleason Grade Group ≥ 3)、早期前立腺がん、ケンブリッジ予後グループ、前立腺がん死亡率、全死因死亡率。

混合効果ロジスティック回帰モデルを実行した。


結果 

722,597 人の男性が含まれた 。262,178 人 (36.3%)にコード化された症状があった。平均年齢は 64.4 歳 (SD 9.76) であった。90.68% が白人であると特定された。インデックス コンサルティングから 24 か月以内に 12,297 件の新しい前立腺がんの診断 (有症状群で8,101 人 [65.88%] )。臨床的に重要な前立腺がんは、症状群でより起こりやすい (調整 OR 1.14; 95% CI 1.07-1.23) ことがわかった。診断時の病期に差は見られなかった(調整オッズ比 1.02、95%信頼区間 0.95-1.09)。


結論:プライマリケアで症状のある患者を検査すると、診断時の病期に差がないにもかかわらず、臨床的に重要な前立腺がんが発見される可能性が高くなる。


感想

解釈が混乱してしまうのですが、要するに、有症状の患者でPSAを測定すると症状がない場合より前立腺がんが見つかる、ということでしょうか。当たり前のような気がします。

2026年8月11日火曜日

クリニックでの尿検査の質改善

 Yamashita H, Takahashi H, Shiota M. Sustained Improvement in Urine Testing Quality Indicator Through an Audit-and-Feedback Intervention in Japanese Primary Care: A Before-and-After Study. J Gen Fam Med. 2026;27(5): e70162, https://doi.org/10.1002/jgf2.70162.


背景

糖尿病性腎症のスクリーニングには、尿アルブミン・クレアチニン比または尿タンパク質・クレアチニン比を用いた年1回の尿検査が推奨されているが、日本の非専門プライマリケアにおける実施率は約20%にとどまっており、監査とフィードバックによってこの品質指標の持続的な改善が得られるかどうかのエビデンスは限られている。本研究では、監査とフィードバック介入が尿検査QIの達成度と、積極的なフィードバック終了後のその持続性に及ぼす影響を評価した。


方法

私たちは東京の都市部にあるプライマリケアクリニックで、単一施設での前後比較研究を実施した。品質指標の達成度は、12ヶ月間のローリングウィンドウ(注:その時点から過去12か月をみることができる)を10回にわたって測定しました。2024年に実施された3回の個別フィードバックセッションでは、それぞれ医師レベルの達成率と予約ベースの患者識別リストが含まれた。ランチャート分析によってプロセスの変化を評価し、介入後の医師アンケートでは、COM-Bフレームワークを用いて促進要因と阻害要因を調査した。


結果

介入前の達成率の中央値は 18.6% であった。介入後、達成率は 19.7% から 53.7% に上昇し、34.0 %ポイント増加した。また、シフトルールが満たされ、8 つの連続したポイント (M3 ~ M10) が介入前の中央値を上回った。積極的な介入期間外の M9 ~ M10 では、達成率は 56.5% (ベースラインより 36.8 %ポイント上) でした。医師個人ごとの分析により、持続的な改善が確認された (Wilcoxon W = 7、p  = 0.005、n  = 13)。調査では、患者識別リストが主要な促進要因であり、電子カルテの繰り越し注文と検査後の管理に関する不確実性が主な阻害要因であることが明らかになった。


結論

監査とフィードバックによる介入により、非専門医によるプライマリケアにおける尿検査の品質指標達成度が大幅かつ持続的に向上した。患者識別リストが初期の改善を促進した可能性があり、持続的な達成は行動のルーチン化を反映していると考えられる。


感想

auditの研究はこのようにするんだと勉強になりました。質改善の研究はまさに実装という感じてプライマリケア研究っぽいですよね。いいですねこれ。こういう研究してみたい。

2026年8月10日月曜日

若者のオンライン活動を診察室で話題にしているか

 Archer C, Linton MJ, Kessler D, et al. Talking about online activity and mental health with young people in primary care: A qualitative interview study. Br J Gen Prac. 7 August 2026; BJGP.2026.0076. DOI: https://doi.org/10.3399/BJGP.2026.0076


背景: 16~24歳の若者はデジタル技術を頻繁に利用している。オンライン活動はメンタルヘルスに有益な場合もあれば有害な場合もある。GPやプライマリケアのカウンセリングでは、若者とオンライン活動とそのメンタルヘルスへの影響について話し合う機会がある。このような会話は、問題行動への認識を高め、リスクを特定し、より安全な利用戦略を提案することで、予防的な価値を持つ可能性がある。しかし、プライマリケアで現在このような会話が行われているかどうかはほとんど知られていない。


目的: プライマリケアで若者のメンタルヘルスにおけるオンライン活動とその役割について話し合うことに関する医療従事者の見解を探る。


デザインとセッティング: GPとカウンセリングの医療従事者を対象とした質的調査


方法: 24人の医療従事者に対する半構造化面接を実施し、内省的テーマ分析を用いて分析した。


結果: 医療従事者はオンライン活動の有益な側面と有害な側面を認識しているが、現在オンライン活動について質問しているかどうか、またプライマリケアで会話が適切だと考えているかどうかにはばらつきがある。自信と意思決定にはいくつかの要因が影響している可能性がある。それは、医療従事者自身のオンライン世界に対する理解、精神衛生への影響を変えたり、適切なサービスにつなげたりすることができないこと、そして、時間・自信・トピックに関する知識の不足である。医療従事者は、オンライン活動に関する会話を円滑に進めるためのガイダンスとトレーニングの必要性を認識した。


結論:プライマリケアにおいて、若者とのオンライン活動に関する会話が行われているかどうかはまちまちである。若者にとって受け入れやすく、問題のあるオンライン活動を改善して精神衛生を向上させる効果的な会話を実現するためには、ベストプラクティスのリソースの開発が必要である。


感想:良い着眼点です。言われたら確かに重要なことだと思いますよね。特に思春期の起立性調節障害を診察する際には、重要なトピックになりますが、私自身あまり理解できていないので、何らかのガイダンスがあれば役に立つと思います。

2026年8月9日日曜日

SGLT-2阻害薬とGLP-1RAの併用

 Chuang MH, Ho CW, Wang HY, Pan HC, Wu VC, Tu YK, Chen JY. Cardiovascular and renal outcomes of combined SGLT2 inhibitors and GLP-1 receptor agonists versus monotherapy in patients with type 2 diabetes mellitus: a network meta-analysis. CMAJ. 2026 Jul 12;198(26):E992-E1001. https://www.cmaj.ca/content/198/26/E992


背景: 2型糖尿病において、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬を併用することが、どちらか一方を単独で使用する場合よりも効果的であるかどうかは依然として不明である。本研究では、ネットワークメタアナリシスを用いて、SGLT2iとGLP-1受容体作動薬の併用療法と単剤療法における心血管系および腎臓系の転帰を評価することを目的とした。


方法: 2025年8月15日までにMEDLINE、Embase、およびCochrane Libraryを包括的に検索し、2型糖尿病患者を対象としたSGLT2阻害薬またはGLP-1受容体作動薬のランダム化比較試験(RCT)を特定した。系統的レビューとネットワークメタアナリシスにおいて、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の両方、またはどちらの薬剤も投与されていない患者を比較した。主要評価項目は、主要有害心血管イベント(心血管死、心筋梗塞、および脳卒中)および主要有害腎イベント(推定糸球体濾過率の低下、腎不全、および腎不全による死亡)とした。副次評価項目には、心不全関連の入院、重篤な有害事象、および低血糖が含まれた。


結果: 99,683名の参加者を含む12件のRCTを対象とした。SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の併用療法による主要心血管イベントのリスクは、SGLT2阻害薬単独療法(リスク比[RR] 0.86、95%信頼区間[CI] 0.74~1.01、エビデンスの確実性は非常に低い)またはGLP-1受容体作動薬単独療法(RR 0.95、95% CI 0.81~1.12、エビデンスの確実性は非常に低い)と比較して有意差は認められなかった。同様に、主要腎イベントのリスクも、SGLT2阻害薬単独療法(RR 1.05、95% CI 0.74~1.49、エビデンスの確実性は非常に低い)またはGLP-1受容体作動薬単独療法(RR 0.86、95% CI 0.60~1.21、エビデンスの確実性は非常に低い)と比較して有意差は認められなかった。しかしながら、併用療法はSGLT2阻害薬(相対リスク0.72、95%信頼区間0.52~0.99;確実性非常に低い)またはGLP-1受容体作動薬(相対リスク0.62、95%信頼区間0.45~0.86;確実性非常に低い)と比較して、心不全関連の入院リスクが低いことが示された。重篤な有害事象または低血糖のリスクは、併用療法と単剤療法の間で有意差は認められなかった。


解釈: SGLT2阻害薬またはGLP-1受容体作動薬単独療法と比較して、併用療法は主要な心血管系または腎臓系の有害事象のリスクを有意に低下させなかったが、心不全関連の入院リスクは低下した。2型糖尿病患者における併用療法の比較有効性を明らかにするためには、併用療法と単剤療法を直接比較するランダム化比較試験が必要である。


感想

併用が強く推奨されるものではなさそうですね。これまでの診療スタイルを変えるものではなさそうだなという印象です。