2017年6月24日土曜日

自由,になること



学生の時に読んで,いまだに何回も読み返すエッセイ.
これまでの活字経験の中で,これを超えるエッセイはまだないです.
今の臨床にも大いに影響しているし,ものの見方,捉え方の基盤となっている文章です.

よかったら,どうぞ.

「まだの性」
~あるトランスジェンダーが見てきたこと~


ちなみに,無粋ながら試験問題風にしてみました.

問1.「トランスジェンダーは、『何かになりたがっている』と思われるらしい。」とあるが,その理由を60字程度で説明せよ.

問2.「全身で抵抗していた」とあるが,その理由を60字程度で説明せよ.

問3.「私はFTMという言葉を手に入れたことにより、『FTMになった』」とあるが,どういうことか60字程度で説明せよ.

問4.「相変わらず『男女ゲーム」』の盤上にしか私はいなかった」とあるが,どういうことか60字程度で説明せよ.

問5.「自分を自由にすること。周りの誰かが自由になれること」とあるが,ここでの「自由」とは具体的にどのようなことか,120字程度で説明せよ.


さらに無粋ながら,解答例はこちら.

解答例1 
男・女らしさが強制される社会では,自分が通暁し理解できる範疇に分類できない存在は不完全だとみなされてしまうから.

解答例2
社会に既にある枠組みに入ることを自分に強いる以外に自己の存在を安全に確立する方法がないと無自覚のうちに感じていたから.

解答例3
自分に親和性が高いと思われる概念を発見し,どうにかその範疇に収まることによって,自我を守ろうとした,ということ.

解答例4
既成概念の枠に自分をはみ出さずに当て込むという無理を自らに課し苦しむという状態に変わりはなかった,ということ.

解答例5
限られた特性集団のどれかに属さなければいけないという圧力が強い社会であっても.むりやりに何かに所属したり分類されたりする必要はない.自分の存在を既存の枠に押し込まなくてはいけないという狭い了見から自分も他人も開放していくこと.


2017年6月18日日曜日

家庭医療専門医 なんちゃって模擬試験


とある機会があり,作成してみました.
本当の試験がどのような形式か知らないので,あくまでお遊びです.
また,症例は架空のケースです.

症例:39歳男性.自営業.5年前,感冒症状で当院を受診し,血液検査で偶発的に2型糖尿病(HbA1c 12%, 随時血糖300)が発覚し,治療をすすめられるも継続受診に至らなかった.2年前に小外傷の治療目的に当院を受診したことを契機に,糖尿病の継続治療に同意し,糖尿病専門医のもとで経口血糖降下薬の処方を受けていたが,1か月で治療中断となった.本日,「そろそろまずいかな」と思い,家庭医療科外来を初回受診した.口渇,多尿,浮腫,体重変化はないが,足趾のしびれを自覚している.また,半年前から左目の視野のかすみを感じている.未婚独居.飲酒なし.タバコは1日1箱.

身体所見 身長170cm 体重80kg
血圧144/100mmHg 脈拍80bpm整 発熱なし 呼吸回数12/min
心雑音なし 呼吸雑音なし 腹部は平坦・軟で腸蠕動音正常
下腿浮腫なし 左視力:手指弁レベル

検査値 (括弧内は中断前のデータ)
随時血糖  450 (200)
HbA1c   13.0(11.0)
LDL-C   150 (115)
尿蛋白   2+  (1+)
尿ケトン  陰性
血算,肝機能,腎機能に異常はない

設問1:追加で行いたい身体診察ならびに臨床検査があれば,記載してください.

設問2:糖尿病性網膜症について,この患者の治療や今後のマネジメントに関連して重要だと考える事項を記載してください.

設問3:外来でインスリンを導入することに患者は同意した.①外来でのインスリン導入の具体的な処方と,外来管理を行う上での留意点について述べてください.②インスリン自己注射の具体的な方法と,この患者に自己注射を指導する際に強調すべき点について述べてください.③インスリン導入に対する一般的なハードルについて,医療側,患者側それぞれの側面で述べたうえで,対応策を考えてください.

設問4:家庭医療の原理であるACCCC(A)の5項目について,各項目を日本語または英語で答えてください.また,5項目のうちから1つ選び,家庭医療の原理に基づきながらこの患者に対応するなら,あなたならどのような点に留意するか,思うところを述べてください.


2017年6月11日日曜日

外来診療小ネタ集 便秘の評価/リンパ節腫大のエコー所見


家庭医の外来診療で出会ったプチ疑問をまとめます.

①新規亜急性発症の便秘の評価

消化管全体の詳細な問診,そして直腸診.
非薬物治療は以下の通り
①bowel training(決まった時間に排便を試みる)
②運動
③食物繊維20-25g/d
④水分1500ml/d

常に原因検索の姿勢を.
癌はどうか?薬剤はどうか?
CCB,鉄剤,抗コリン,カルシウムに要注意.

参照:Swanson's family medicine


②リンパ節腫大のエコー所見

短径>8mmまたは長径/短径<2で悪性疑い
微小石灰化・PDで周辺血流あればほぼ悪性
(Radiology 243:258-67)

放射状中心血流あればほぼ良性
血流半放射状,多発性中心血流,中心血流消失あればほぼ悪性
(AJR Am J Roentgenol 168:1311-6)

参照:内科診断リファレンス pp.8-9


2017年6月5日月曜日

ミニレクチャー ラクナ梗塞


10分で調べ5分で発表するミニレクチャー
ラクナ梗塞について

5つの古典的サブタイプ
これらの症状がある患者では,まず間違いなくラクナ梗塞があると言える.

症候群名
部位
症状
純運動片麻痺(最多)
内包,放線冠,橋底部,内側延髄
顔面・上下肢の片麻痺
感覚障害は呈さない
純感覚症候群
視床,橋被蓋,放線冠
顔面・上下肢片側感覚障害
運動障害は呈さない
失行性片麻痺
内包~放線冠,橋底部,視床
片麻痺と四肢失行
感覚運動症候群
視床内包
時に橋底部,外側延髄
顔面・上下肢の片(不全)麻痺+同側の感覚障害
構音障害-手巧緻性低下症候群
橋底部,内包,放線冠
顔面片麻痺,構音障害,嚥下障害,軽度の手巧緻性低下













参照:UpToDate

ラクナ梗塞は,発症後に数日の単位で症状が変動する.

Branch atheromatous disease(BAD):1989年にCaplanが提唱(未確立の概念)
脳血管穿通枝入口部の微小アテロームによる閉塞から穿通枝領域全体が梗塞に陥る
治療抵抗性を示す進行性増悪の経過 生命予後良好だが機能予後不良
 (Clin Neurol 2010;50:921-924)