2016年10月22日土曜日

ホームレス状態にある人のケア part3


這う這うの体で,part3です.
ホームレス状態にいる人だけでなく,あらゆる社会的剥奪に成り立つ内容だなと思います.


AFPの2014年の総説ですが,
ホームレス状態の人のケアについてかかれてあります.

学会誌の総説に掲載するその姿勢がカッコいいです。
日本の状況もほぼ同じだよなと実感する内容でしたのでぼちぼち全訳していきます。

Care of the homeless: an overview
AFP 89:634-40.


【訳注】
形容詞のhomelessを「ホームレス状態」と訳すことにします.
Homelessness, the homeless, homeless personsなどの用語も,上記に準じ文脈に応じて訳しわけます.
日本で使われる,人あるいは集団をさす言葉としての「ホームレス」は,あたかも固定化された集団であるかのような印象を与える(と個人的に思っている)ためです.


臨床状態,医学的状態

 ホームレス状態の人々も,一般人口と同じ医学的状態になる.異なる点は,長期間の病原暴露,狭い場所への稠密,不衛生,栄養状態不良,不良な睡眠環境.暴力,身体的心理的外傷,性的虐待,激しい天候に見舞われているというところである.このような逆境に対し適切に対応し,医学的問題に対処する能力は,教育機会の制限,精神疾患,物質乱用,信頼感の欠如の影響を受ける.以上により,ホームレス状態の人々は病気が進行した状態で見つかることが多く,治療介入は個々人の状況により様々となる.


心血管障害

 コントロールされていない高血圧,冠動脈疾患,鬱血性心不全,末梢血管障害がホームレス状態でよくみられる.食事が貧相なことは,栄養関連障害の発症やコントロールされていない糖尿病,脂質異常症,高血圧の高い罹患率に寄与する.怒り,過度な心理的ストレス,精神疾患,対処機構の乏しさ,アルコールや薬物の乱用は,リスクファクターとよくいわれるものの影響を助長させ,非常に早期に心血管疾患の罹患率と死亡率を著明に増加させる.
ホームレス状態の人々の平均寿命は42-52歳である.血圧,コレステロール,糖尿病の標準目標を達成するために,薬物治療を早期に開始するべきである.そして医師はケアマネージャーやリエゾン精神科医と緊密に連携し,健康的な食事を担保し,ストレスを減らし,治療計画を患者が順守してくれるようにすべきである.ライフスタイルを変化させようとしても大抵はうまくいかない.


重複診断:精神疾患と薬物乱用

 ホームレス状態の人々の約20-30%に精神疾患があり,30-50%に薬物乱用単独または薬物乱用と精神疾患の併存(重複診断とよばれる)がある.精神疾患では,大うつ病,双極性障害,統合失調症が多い.自殺のリスク因子は30歳以下,ヒスパニック,低い教育レベル,ホームレス状態の長期化がある.Health Care for the Homeless Clinicians' Networkはうつ状態のスクリーニングとして2項目あるいは9項目の Patient Health Questionnaireを推奨している.また,薬物乱用のスクリーニングとしては Simple Screening Instrument for Alcohol and Other Drug Abuseを推奨している.治療の根幹は,安定した住居を見つけたうえで,医学的治療に結び付け,支援サービスを提供し,最終的には雇用を獲得することに注力することである.