随分間が空いてしまいましたが,part2です.
AFPの2014年の総説ですが,
ホームレス状態の人のケアについてかかれてあります.
学会誌の総説に掲載するその姿勢がカッコいいです。
日本の状況もほぼ同じだよなと実感する内容でしたのでぼちぼち全訳していきます。
Care of the homeless: an overview
AFP 89:634-40.
【訳注】
形容詞のhomelessを「ホームレス状態」と訳すことにします.
Homelessness, the homeless, homeless personsなどの用語も,上記に準じ文脈に応じて訳しわけます.
日本で使われる,人あるいは集団をさす言葉としての「ホームレス」は,あたかも固定化された集団であるかのような印象を与える(と個人的に思っている)ためです.
リスク因子
ホームレス状態では,1つ以上の慢性疾患があり,かつ物質依存あるいは精神疾患が存在すると,夭逝のリスクが上がる.アメリカの一般人口に比べ,ホームレス状態の人々は3~6倍も病気になりやすく,入院率も4倍高い.夭逝の割合も3-4倍になる.このような身体,精神問題は障害を招くことが多く,雇用の妨げとなり,ホームレス状態から抜け出せなくなる.The Housing and Urban Development調査によると,シェルターにいるホームレス状態の人々推定1600万人のうち,およそ37%に障害がある.この割合は,貧困層では25%,一般人口では15.3%である.
ホームレス状態は子どもにも悪影響がある.生まれながらにホームレス状態である乳児は出生時体重が低く,生後12か月以内に亡くなる割合が9倍になる.ホームレス状態の子どもはそうでない子どもと比べて病気になる割合が4倍以上であり,喘息,鉄欠乏,鉛中毒,呼吸器感染症,耳感染症,消化器障害,感情・行動面での問題(不安,抑うつ,引きこもり,易怒性,敵意など)の発生割合が多い.発達遅延をきたす割合も4倍であり,成長障害は6倍,学習障害は2倍である.加えて,一般小児と比べて,飢餓,虐待,ネグレクト,家族からの別離を経験していることが多く,栄養も不足している.
初期介入
患者がホームレス状態にあるか,または家族を含めてその危険があるかを同定するのがまず行うべきことである.アウトリーチ活動がホームレス状態の患者と初めて出会う機会となることが多いであろう.初回の受診で,医師をはじめとするスタッフは,心からの関心と共感,敬意を示し,患者を温かく迎え入れ,脅したり裁いたりしないよう注意するべきである.初回診療の目標は,シンプルな治療で改善が得られる症状にまず介入し,患者の生活に目に見える影響を与えることである.こうすることで患者は信頼と安心感を得て,再び診察室を訪れるようになる.信頼とラポールが形成されて初めて,緊急時の連絡先を確認したり,社会的,医療的,精神的問題や終末期について意見を交わしたりするなど本丸の目的に進むことができる.
初期評価が終わったら,患者の適切な治療プランを立てる際の実際上の複雑さを考慮すべきだ.しっかりとしたコミュニケーションと移動方法がないことが予想されるので.紹介をしたり,フォロー外来の予約を取ったり,血液検査や治療への反応をモニターするのはなかなかむずかしい.この分野では,患者の代弁者やケースマネージャーが助けになってくれる.ゴールを決め,短期間でわかる成功の指標を決め,スタッフから定期的に進捗を報告してもらうことで,疾患のマネージメントという最大の難問に立ち向かえるかもしれない.