2021年11月3日水曜日

珍しいがんの早期診断のために、非特異的症状での紹介ルートを!


Chapman D, Poirier V, Fitzgerald K, Nicholson BD, Hamilton W; Accelerate Coordinate Evaluate Multidisciplinary Diagnostic Centre projects. Non-specific symptoms-based pathways for diagnosing less common cancers in primary care: a service evaluation. Br J Gen Pract. 2021 Jun 4:BJGP.2020.1108. doi: 10.3399/BJGP.2020.1108. Epub ahead of print. PMID: 34097639; PMCID: PMC8463131.

https://bjgp.org/content/71/712/e846.short?rss=1


プライマリケア領域でのがんの診断は、重要な実践・研究課題の1つです。


最近ですと以下の論文が出ています。どれも重要なテーマを扱っています。

【大腸がん】

J Gen Intern Med. 2021 Apr;36(4):952-960. PMID: 33474640

J Am Board Fam Med. 2021 Jan-Feb;34(1):61-69.  PMID: 33452083.

J Gen Intern Med. 2021 May 28:1–8. PMID: 34047921

Br J Gen Pract. 2020 Nov 26;70(701):e843-e851. PMID: 33139332

【肺がん】

Br J Gen Pract. 2021 Mar 26;71(705):e280-e286.  PMID: 33318087

Br J Gen Pract. 2021 Apr 16:BJGP.2020.1099.  PMID: 33875450


今回紹介する論文では、「uncommonな悪性腫瘍」を扱っています。

uncommonといえども、数が多いので全部合わせると悪性腫瘍診断の約半数を占めます。

uncommonな悪性腫瘍は、非特異的かつ複雑な症状を呈するので、プライマリケアでなかなか診断できず、結果的に病状の進行を招いてしまう危険性があることが分かっています。


そこで、英国では、Multidisciplinary Diagnostic Centre (MDC)という、非特異的症状であってもGPが高次医療機関に紹介できる紹介経路を構築しています。

この論文はMDCのパイロット研究です。


2016年12月から2019年3月まで、英国の5つのMDCにおけるパイロットプロジェクトのサービス評価を行いました。

すると、5134件の紹介から378件の悪性腫瘍が診断され、そのうち218件(58%)がuncommonな悪性腫瘍であったことがわかりました。

症状は、「体重減少」「医師が診て何となくおかしい」「食思不振」などの非特異的な症状が多くを占めていました。これでは症状だけで悪性腫瘍の種類を絞ることはできません。

これらの患者の23%(n=50)は、紹介前に3回以上GPに相談していました、

GPからの緊急紹介から治療までの期間は中央値で57日でした。


まとめると、uncommonな悪性腫瘍は非特異的な症状でGPのもとにやってくるため、早期診断のためには非特異的な症状でも紹介できるルートが必要である、ということですね。


日本の文脈におきかえると、診療所家庭医と、病院総合診療医/病院家庭医との連携をより強固なものにすることが解決の道筋でしょうか。

診療所で勤務していると「最近食べられなくて体重が減っているんです。何かおかしいと思うので精査してください」という病院への紹介はかなりハードルが高いです。

総合診療医/家庭医がいない病院では、「どの科に紹介ですか?」と言われてしまいます。それが分からないから相談しているのに。

これが、プライマリケアの状況をよく知っている病院総合診療医/病院家庭医がいると、途端にスムーズに連携が進みます。

決してがん診断に限った話ではないのですが、病院総合診療医/病院家庭医の役割の重要性を傍証する論文だと私は思いました。