2021年11月14日日曜日

患者の感情に対応すると診療時間が短くなる

Beach MC, Park J, Han D, Evans C, Moore RD, Saha S. Clinician Response to Patient Emotion: Impact on Subsequent Communication and Visit Length. Ann Fam Med. 2021 Nov-Dec;19(6):515-520. doi: 10.1370/afm.2740. PMID: 34750126.

https://www.annfammed.org/content/19/6/515?rss=1

患者の感情を診療中に対応することで、診療時間が短くなるかどうかを調べた研究です。
研究の目の付け所が良いですよね。


41人の医師が計342人の患者を診療している際の音声を録音し,特定の既知のコードを用いて患者の感情表現をタイムスタンプで記録し,臨床医の反応を分類しています。そして、臨床医の反応と、感情表現のタイミングなどと、その後の診察時間との関連を、random-intercept multilevel-regression modelで解析しています。
大学院の疫学系の授業でこの解析方法は(ざっと)習いましたが、このリサーチテーマでこの手法を使うんだと驚きました。言われてみれば納得です。

結果としては、医師が患者の感情を明示的に扱うと、診療時間が短くなる、というものでした。しかし、診療時間の平均が30.4分であり,多くの日本の医療機関にとっては実情にそぐわないものと思います。

その点を差し引いても、患者の感情を明示的に扱っても診療時間は長くならない(むしろ短くなる)というのは、押さえておくべきポイントだと思います。