2021年3月24日水曜日

swarm intelligence: 群れの知能とは

 Cristancho SM. On collective self-healing and traces: How can swarm intelligence help us think differently about team adaptation? Med Educ. 2021 Apr;55(4):441-447. doi: 10.1111/medu.14358. Epub 2020 Sep 8. PMID: 32815185.


背景

医療チームは、高品質で安全な患者ケアを提供するという集団目標を達成するために、複雑な課題を乗り越えることをますます強いられている。チームワークに関する文献では、医療チームの効果的な適応行動を促進する戦略の開発に苦労している。この課題は、真に集団的な適応行動をとるためには、チームのメンバーが自己充足的に行動したいという人間の衝動を捨てる必要があるという事実に起因している。自然界には、社会性のある昆虫、魚、鳥のコロニーに見られるような集団行動の顕著な例がある。この集団行動はスワームインテリジェンス(群れの知能,SI)として知られています。しかし、ヘルスケアチームに関する文献では、SIはほとんど記述されておらず、その潜在的な利点も隠されている。


目的

このcross-cutting edge論文では、人間のチームにおけるシステム的または集団的な適応に関連するSIの原理を探る。特に、痕跡型コミュニケーションと集団的自己回復の原理を考察し、医学教育におけるチーム適応の研究者に何を提供できるかを考える。


研究成果

SIの観点からは、問題の解決は個人の行動ではなく、群れのメンバーの集団行動の結果として現れる。この集団行動は、「直接・間接のコミュニケーション」「気づき」「自己決定」「集団的自己治癒」という4つの原則によって実現される。その中でも、「痕跡型コミュニケーション」と「集団的自己回復」は、他の業界でもチームの適応力を高めるために意図的に使われている。痕跡型コミュニケーションとは、環境に「痕跡」を残して他者の行動を促すことである。集団的自己回復とは、群れのメンバーを交換可能にすることで、失敗に対処し、変化に適応する能力のことである。


おわりに

チームが間接的なコミュニケーションに依存し、交換可能であることを認めることは、私たちの考え方に違和感を与えるかもしれませんが、医療以外のチームは人間のチームワークを向上させるためにその価値を実証している。SIは、チームの適応について考えるための有用なアナロジーと建設的な言語を提供する。


感想

なんだかめちゃ面白い論文を発見しました.痕跡型コミュニケーションも集団的自己回復も非常に腑に落ちます.(最近twitterで話題の,「主治医に電話したが応答せず」という看護記録も,ある意味で痕跡型コミュニケーションでしょうか.)