2020年8月3日月曜日

JPCA症例報告ポスターから学ぶ(part 1)


日本プライマリ・ケア連合学会学術大会がオンラインで始まりました.
自宅で学習講演が聴ける,しかもいつもは裏かぶりで聴けないものも全部聴ける,というのは素晴らしいですね.一方で参加者同士の交流がほぼなくなってしまうのは淋しいです.

私はポスターを3本出しております.よければご笑覧ください.

[P-症-569]薬におぼれる:入院が契機となり有害事象が生じたポリファーマシー
[P-症-628]CTで見落とし,身体診察で判明した急性腹痛の原因:内腹斜筋断裂
[P-活-124]健康の社会的決定要因を臨床現場に実装する~社会的バイタルサインの開発,実践,普及と今後の展望~

折角手元でポスターデータを閲覧できるので,
症例報告ポスターから学んだことをまとめてみます.
括弧内は私のコメントです.
ポスターの内容については,一般公開されている抄録にある情報の範疇で記載いたします.

510. 初回指摘の肝硬変に合併した肝肺症候群の一例

・肝硬変患者の低酸素血症で鑑別に入れる
(経験に乏しいので,いざ目の前に来ると頭が回らなさそう.症例報告を学ぶ意味はまさにそこにありますよね)
・立位,臥位でSpO2が変動する
(シャントによるplatypnea-orthodeoxia syndromeのことでしょうか.起坐呼吸とは逆で,坐位で呼吸困難感が増悪します.肝硬変患者で1例経験があります.)
・胸部造影CTでは末梢で肺血管拡張あり.コントラスト心エコー検査陽性が補助所見となる.
(私の診療セッティングでは肺血流シンチができないので,このあたりで診断がつけられることを目標にします.除外診断が前提ですが.)

512. シタグリプチン投与後に血小板減少症をきたした一例

これは単純に,へぇーそんなことがあるんだ,というものですね.
DPP-4阻害薬の一般的な副作用,というわけではなく,
どうやらシタグリプチンに特異的に起こるようです.

516. 離島での医療資源に乏しい環境で適切なマネジメントができためまい症の一例

・めまいの身体診察はHINTS PLUS
(本症例はHead Impulse Testで内耳障害のパターンを呈さなかったことが,中枢性めまいを疑う根拠となっている.)
・中枢性めまい患者の大半に糖尿病または脂質異常症の病歴がある
(血管リスク評価は,とくに心筋梗塞を疑うときに気にしますが,めまいを見る際にも意識したほうが良いですね)
この症例で素晴らしいのは,身体診察と現場での判断が搬送直後のMRIより優れているという点です.ぜひポスターをご覧になってください.

521. 医療機関と教育期間で密に連携し,重症頭部外傷患者の高校受験に取り組んだ一例

ただただ驚嘆する報告です.
「患者に寄り添う」という言葉は手垢がついた陳腐なものになってしまっていますが
医療現場がここまでできるのだと心が奮いたてられます.
いやぁ.すごいです.