2020年8月10日月曜日

JPCA症例報告ポスターから学ぶ(part 2)


JPCA学術総会がオンラインで開催されています.

折角手元でポスターデータを閲覧できるので,
症例報告ポスターから学んだことをまとめてみます.
括弧内は私のコメントです.
ポスターの内容については,一般公開されている抄録にある情報の範疇で記載いたします.


522. 訪問薬剤師が在宅医と専門医の橋渡し役を担うことで,薬剤性ジスキネジアを消失できた1症例

・幻視,幻聴に対して処方された抗精神病薬ブロナンセリンによる薬剤性ジスキネジアに訪問薬剤師が気づいた.
・患者の服に米粒がついている→食事に問題があるのではないか→食事の時間に訪問した→歯がカクカクしている→これって薬剤性ジスキネジアでは?→動画を取って処方医に情報提供→ほかの薬剤に切り替えてジスキネジア消失,という流れ.
(まるで推理小説ですね.衣服に米がついていることに気付いて,そこまで推論を働かすことができるというのは,プロフェッショナルの業ですね.)
(”服に米粒がつくようになった?内服薬を確認しなさい.”というClinical Pearlはいかがでしょうか)


524. チラーヂンS錠にて薬疹が生じ,チラーヂンS散への変更で改善した2例

・チラーヂンS錠の添加物がアレルギー反応を引き起こすことがあり,その場合は散剤に変えることで対応できる.
(知りませんでした.錠剤の添加物のアレルギーなんて思いもしませんでした)
(知らなければ,単純にチラーヂンを止めるという話になりますが,よく考えてみれば甲状腺ホルモンは本来体内で産生されるものであり,それでアレルギーというのは腑に落ちないのですね.)
(ポスターにはさらに細かい考察がなされています.知らなくては絶対思いつかないので,とても教育的な症例です.)
(”チラーヂンS錠でアレルギー?散剤にするか50µg錠を使いなさい”というClinical Pearlですね)
(それにしても,筆者の先生方はどうして散剤に変えると良いということを知っていたのだろう?専門医の間では有名なことなのかな.)


531. 関節外症状のみで発症し地域医療連携の中で早期診断が困難であった悪性関節リウマチの一例

・長期にわたる貧血と血清CRP高値.他の所見はGAVEのみ.
・半年後に後頭部に1cmの腫瘤が数個あり.
・総合病院皮膚科に紹介するなどしたが,生検されず適切な診断がされないまま経過.
・関節症状が全くない悪性関節リウマチ(腫瘤はリウマトイド結節)と診断したが死亡.
(筆者の無念さが伝わってきます.)
(このようなケースを報告してくださるのは本当にありがたいことだと思います.)
(専門医に紹介して,「××の疑い」として返書が来た時に,「そんなわけないじゃん」と思ってもそれ以上追求できない,というのは,小病院総合診療科のあるあるなのかもしれないです)
(不明熱患者に突然できた腫瘤,というキーワードで関節症状がなくてもリウマトイド結節を想起できるようになっておくとよいのかもしれません)
(筆者のドヤ顔が浮かぶような症例報告より,このようなエラーを克明に記録した症例報告の方が,学ぶものが多いです.自戒を込めて)