JPCA学術総会がオンラインで開催されています.
折角手元でポスターデータを閲覧できるので,
症例報告ポスターから学んだことをまとめてみます.
括弧内は私のコメントです.
ポスターの内容については,一般公開されている抄録にある情報の範疇で記載いたします.
535 8年前からのめまいで受診した持続性知覚性姿勢誘発めまいの1例
・8年前に頭位変換時のめまいが出現
・浮動性.持続時間は数秒~数分.日に何度も繰り返す.
・特定の姿勢(立位,歩行,上を向くなど)で誘発される.
・身体診察では異常なし
(vertigoじゃないけど,症状が出るタイミングに再現性がある,というのがポイントなのでしょうか.History,History,Historyですね)
・PPPD(Persistent Postural Perceptual Dizziness)と診断.
・認知行動療法とSSRI/SNRIで改善.
(PPPDは新しい疾患概念として知ってはいたが,詳しく勉強していなかったので,良い機会になりました)
(VertigoでなくてDizzinessであることと,誘発は頭位に限らず立位や視覚刺激もありうることを覚えておこうと思います)
(怖いのは過剰診断ですね.つい最近も「めまい症」で近医からいわゆる抗めまい薬を出され続けていた若年糖尿病性ケトアシドーシスのケースがありました)
553 繰り返し急性上気道炎として診断,加療されていたが,複数回問診を行い診断に至ったHIV感染症の一例
・若い男性が3日前からの発熱で救急受診→上気道炎として対症療法
(ここまではよくある経過.)
・その2日後に解熱しないと病院外来受診.体幹四肢に丘疹あり.臨床的にインフルエンザと診断しタミフル処方.
(後医は名医ですが,これは頂けないですよね.5日間の発熱でインフルエンザはないでしょうし,この経過で体幹四肢の丘疹があれば,急性HIV感染症,伝染性単核症,マイコプラズマが想起されます.)
・さらに7日後,強い頭痛が生じ救急受診.無菌性髄膜炎で入院.ここで診断がついた.
(プライマリケアでHIVの見逃しを避けるのはchallengingだといつも感じています.急性の感冒様患者全員に詳細に性交渉歴を聴取するのは非現実的だと思います.このポスターの考察はとても建設的で家庭医の役割を重視したものになっていますが,やはり急性HIV症候群のillness scriptを有しているかどうかが診断に関しては最も重要なのではないかと思います.)
555 朝起きられないのは鉄欠乏症が原因だった.
・3年前から朝起きられず学校に行けない高校生
・貧血のない鉄欠乏があり,鉄補充したら症状が改善した
(こういうケースは超大事で,気付けるかどうかで患者の人生が大きく変わります)
(ポスターでは同施設で過去3年間の貧血のない鉄欠乏のケースがまとめられており,これがかなり勉強になります.)
(私も倦怠感や抑うつがある女性では積極的に鉄を測定していますが,このポスターを見るともっと対象を広げたほうがよさそうです)
(ただし,鉄欠乏は有病割合が高いので,単に合併しているだけの可能性もありますね.補充自体は害は少ないと思うので,しっかりフォローしなくてはいけません.漫然と投与して他の疾患を見逃すことがないようにしたいです)