2020年8月24日月曜日

JPCA症例報告ポスターから学ぶ(part 4)


JPCA学術総会がオンラインで開催されています.

折角手元でポスターデータを閲覧できるので,
症例報告ポスターから学んだことをまとめてみます.
括弧内は私のコメントです.
ポスターの内容については,一般公開されている抄録にある情報の範疇で記載いたします.


562 抗IL-6受容体抗体投与中に発熱やCRP上昇を伴わず発症した急性喉頭蓋炎の一例
・関節リウマチでトリシズマブを投与されている患者が,咽頭痛,嚥下困難のため診療所を受診した.
・発熱なし.白血球8640,Seg 81.6%,CRP 0.06.
・急性喉頭外炎を疑いX線検査でthumb sign確認.耳鼻科紹介で診断確定.
(抗IL-6抗体は血液検査だけでなく,発熱や倦怠感の症状も見えづらくなる,ということをまず知っておかなければいけません.この点,知識はあるものの普段の診療で頻繁に出会う薬剤でないので,パッと想起できない可能性があるなと思いました.)
(トシリズマブ(アクテムラ)やサリルマブ(ケブラサ)を投与されている患者は細菌感染症があっても熱がない,倦怠感がない,炎症反応がない.覚えます)
(このケースだと,咽頭痛と嚥下困難があるので,喉頭の画像検索にはたどり着けるかなと思います.採血ありきだと変なノイズが入ってしまいそうですね)


592 胆嚢炎を疑ったら~私,ときどき垂れて捻じれるんです~
(タイトルがすべて.鑑別疾患リストに入れていないと画像所見を見落としそうです)
(知らないと「何かおかしいんだけど,まあいいか」といってスルーしてしまうことは,胆嚢捻転症に限らずままあることです)


595 病歴聴取の重要性を痛感した急性肺塞栓症の一例
(overdose後の気分不良という触れ込みだったが,実際は肺塞栓症だったというケース)
(overdoseの病歴がなければ診断は難しくないけど,いわゆるred herringのためpremature disclosureに陥ってしまった.)
(このような診断エラーを共有してくださるとはとてもありがたいです)
(ポイントは病歴聴取の重要性ではなく認知エラーだと思います)


596 ニボルマブ投与中止後に急性発症1型糖尿病から糖尿病性ケトアシドーシスに至った1例
(免疫関連有害事象irAEは投与修了後半年までは発症する可能性がありますよ,ということです)
(irAEについては最低限の知識は入れています.こうやって素振りしておくといつか役に立つ…かも)


602 診断に苦慮した感染性胸部大動脈瘤の1例
(MSSA菌血症はsource不明はまま経験しますが,感染性大動脈瘤は確かにpitfallとなるかもしれないです.ただsource不明なら造影CTするような気がします.)
(そこにあっても疑わなければ見えない,というケースであり,やはり共有していただくことはとてもありがたいです)