2019年に行われたコホート研究(患者779人、介護者438人)のデータを利用して、在宅緩和ケアと経済的困難の関係を調べた論文です。
経済的困難の測定は、在宅緩和ケア開始時に、自身の経済的困難を0点から10点で自己評価してもらっています。
そして、アウトカムについては、患者報告指標としてEdmonton Symptom Assessment Scale、distress thermometer、PROMIS-10を、介護者報告指標としてPreparedness for Caregiving、Zarit-12 Burden、PROMIS-10を使っていまず。どれもベースラインおよび1ヵ月後の時点で測定しています。
病院の利用状況については、電子カルテと請求書を用いて把握しています。
そして、経済的困難とアウトカムとの関係を混合効果調整モデルで、病院利用との関係を比例ハザード競合リスクモデルでそれぞれ評価しました。
結果です。
在宅緩和ケアを介する患者の半数に経済的困難がありました。若い患者ほどつらい経済的困難を抱える傾向にありました。
経済的困難は、患者ならびに介護者の症状や苦痛、QOLの低さと関連していました。
ただし、そのような経済的困難がある患者は、1ヵ月後の負担改善の幅が大きく、同時にソーシャルワークとの接触が多かったです。介護者についても精神面での改善の幅が大きかったです。病院利用がより増えているというわけではありませんでした。
以上より、在宅緩和ケアにおいて患者の経済的困窮はコモンな問題であり(特に若い患者)、様々にネガティブな状況と関連するが、在宅緩和ケアを行うことで、おそらく社会的支援が媒介となって、アウトカムが大きく改善する、ということが、この研究で示唆されました。
在宅医療にかかわるものとして、自分の行う在宅緩和ケアがここに示されたような効果を持つものになるように、意識して患者の経済状況に向き合う必要があると思いました。