2020年2月3日月曜日

Hidden curriculumについて


日本プライマリケア連合学会が企画した,英国家庭医療学会(RCGP)指導医を招いての講習会(Training the trainer: TTT)に参加しました.
https://www.rcgp.primary-care.or.jp/

引き続き学んだことをブログにまとめていきます.
今回はhidden curriculumについて.
講習を受けるまで,何となくの理解にとどまっていました.

まずカリキュラムとは何か,について..
AMEE Medical Education Guide No. 23 (Part 1)(PMID: 12098379)によると
カリキュラムとは"everything that happens in relation to the educational programme"
つまり,教育プログラムに関連して起こる全ての出来事の総体がカリキュラムである,というわけです.
本文中では,カリキュラムは環境(environment)として概念化されるものであると論じられており,カリキュラム開発とは環境の変化に他ならないとしています.

また,カリキュラムには以下の3つのレベルがあり,これはどれも相異なるものです.
・Planned curriculum:このようにしなさいといわれたカリキュラム
・Delivered curriculum:実際に現場で提供されるカリキュラム
・Experienced curriculum:学習者が実際に学んだカリキュラム

たとえば,総合診療専攻医はこんな研修をせよとお上からお達しを受けるのがplanned curriculumです.
そして各現場で指導医その他が専攻医にむけて行うのがdelivered curriculum.
専攻医が実際にその場で学び取ったものがexperienced curriculumです.

experienced curriculumの特徴として,教育者がその内容をすべてコントロールできない,という点を認識しておく必要があります.
当たり前の話なのですが,指導医がこれを伝えたいと熱く指導しても,学習者がその内容を学ばなければexperienced curriculumにはならないし,逆にそんなこと教えたつもりはない,というものでも学習者が身に付けてしまえばそれはexperienced curriculumになります.
教えられたのに学ばれなかったカリキュラム内容もあれば,教えられなかったのに学ばれたカリキュラム内容もある,ということです.

現場では,学習者は様々な場面で刻一刻と学びます.
その中には,意識的な学びもあれば,そうでない学びもあります.
指導者は,現場で起こり学習者が体験したことすべてがカリキュラムとなることを認識し,学習者との出会い(encounter)一つひとつが学習者にインパクトを与えることを自覚しなくてはいけません.

つまり,カリキュラムは学習者が経験するすべてのこと,と考えるなら,学習者の経験の大半はhidden curriculumとなるわけですから,普段の現場の環境や,指導者がどのように振舞っているのか,ということから学習者は最も多くの学びを得るはずです.
指導医の一挙手一投足はもちろん,例えば看護師の患者への接し方,医局で聞こえる噂話,スタッフ間の人間関係など,とにかくそこでおこるすべてが学習者に強い影響を与えるのです.

ここで考えるべきことは,臨床現場は教育を第一として想定されていない,ということです.
患者への医療の提供が第一となるのは当たり前ですが,他にも経営問題や患者安全など様々な課題があります.
だからこそ,医療現場は教育の場でもある,ということを常に組織全体にリマインドし,教育する文化を構築する必要があります.
そして,これまでの議論から,教育する文化とは,教育者が常にポジティブな内容に接することができる環境を多職種でつくりあげることである,といえます.

ここから先は私見ですが,hidden curriculumは学生や研修医にとって重要なだけでなく,その現場で働くスタッフや指導者自身にとっても大きな意味を持つものでしょう.
利用者・患者の悪口を平気で言うような環境では,自分もやさぐれてしまいます.
逆に,患者のために一肌脱ぐぞ,という雰囲気の環境では,自身の医療行為もおのずと似た色彩を帯びるようになるでしょう.
医療者の自己犠牲を美徳とする環境なら,やはり燃え尽きるまで働く医療者が増えそうです.

というわけで,筆の赴くまま散らかしながらですが,以上がhidden curriculumについて現時点での私の理解の到達です.