2019年1月14日月曜日

家庭医療に関する疑問と回答(part last)


Kozakowski SM et al. Responses to Medical Students' Frequently Asked Questions About Family Medicine. Am Fam Physician. 2016 Feb 1;93(3):Online. (PMID: 26926619)

家庭医療について医学生が抱きがちな疑問にたいして,Q & Aでまとめています.
日本でも米国でもこの辺りの事情はあまり変わらないですね.

回答は当然米国の状況を反映しているものですが,読んでいて非常に面白いです,
何回かに分けて訳します.今日で最終回です.


家庭医療の研修を受けることでヘルスケアのリーダーになる準備がどのようにして整うのか?

 家庭医療はシステムに基づく診療に重きを置いており,また研修も幅広いため,家庭医はヘルスケアシステムを率いるリーダーとして引っ張りだこになるものである.患者,地域,そしてヘルスケアシステムは,予防医療,急性期医療,慢性期医療の各サービスを提供する際の複雑性を心の底から理解しているような臨床で研鑽を積んだリーダーを求めている.家庭医は他の専門科医師,ヘルスケアに関わる専門職種,ヘルスケアの支援者と専門領域を超えて協働し,ヘルスケアを届けることの全体像を提示することができる.自分の住む地域や州のAAFPの支部に参加しリーダーシップを発揮する機会はたくさんある.


家庭医療の未来はなぜこれほどまでに明るいのか?

 包括的なプライマリケアこそが,地域社会の健康を守り,国家が健康を増進し,健康格差を減らし,ヘルスケアの質を向上させ,ケアにかかるコストを下げるための解決策であるという認識が徐々に社会に広がっている.世界を見わたしても,プライマリケアを基盤としたヘルスシステムはコストが低く,質が高く,ケアへのアクセスも良好である.卒前医学教育の協議会であるジョサイヤメイシージュニア基金をはじめとする高名な機関や政策立案者も,より多くのプライマリケア医を育成する必要性があると言明している.

 患者保護並びに医療費負担適正化法 には,プライマリケアを強化するカギとなる上行がいくつかある.その中には,プライマリケア医への支出を増やし,先進的なプライマリケアモデルの創出を促すものもある.2015年4月の画期的な法案の成立をうけて,サービスの量ではなく結果と質に褒賞を与える新しい支払制度が導入されつつある.

 米国のヘルスケアシステムの急激な変化により家庭医の必要性が高まっている.推算では2025年までにさらに52000名のプライマリケア医が必要になる.ゆえに,家庭医がどの専門科よりも求人率が高いことは驚くことではない.

 2014年より始まった「アメリカの健康のために家庭医療を」プロジェクトにより,診療モデル,支払い,技術,労働力,教育,研究を向上させるロードマップが作成された.これは,患者,雇用者,支払者,政策立案者,プライマリケアに関わる他の専門職と協働して,プライマリケアの価値と利点,そして米国全土で健康とヘルスケアの需要を合致させるために家庭医がどれだけ貢献できるかを示すことを目的としている.

 家庭医は,医学のアートとサイエンスをどちらも用いて,長く続く関係性を活かし健康とウェルビーイングに影響を与える.これが,家庭医が自分の仕事を愛する理由であり,家庭医療のキャリアを選ぶ人の将来が輝かしいものとなる理由である.