2018年12月3日月曜日

家庭医療に対する疑問と回答(part 2)



Kozakowski SM et al. Responses to Medical Students' Frequently Asked Questions About Family Medicine. Am Fam Physician. 2016 Feb 1;93(3):Online. (PMID: 26926619)

家庭医療について医学生が抱きがちな疑問にたいして,Q & Aでまとめています.
日本でも米国でもこの辺りの事情はあまり変わらないですね.

回答は当然米国の状況を反映しているものですが,読んでいて非常に面白いです,
何回かに分けて訳します.


なぜ家庭医療はこれほど重要なのか

 あらゆる専門科のなかで、家庭医療がプライマリケアの定義に最も当てはまる。患者を最初に診て、継続的、包括的に、多くの人と協同してケアを提供する。その対象も性別、疾患別、臓器別になっておらず、あらゆる人を診る。プライマリケアに基づいたヘルスケアシステムは、患者のQOLを上げ、集団としての健康を促進し、公平性を担保し、かつコストもかからない。米国は伝統的にプライマリケアの担い手をあまり重視しておらず、他の西欧諸国と比べてヘルスケアがあまり上手く機能していなかった。西欧諸国では、重要なポイントに沿ってヘルスケアのシステムがどのように機能しているかをしっかり評価していた。米国のヘルスケアシステムが医療サービスの量ではなく質を大事にするようになってきて、家庭医も国民の健康に良い影響を大きく与えることのできる体制になってきている。


家庭医療のケアモデルと患者中心メディカルホームとは何か

 家庭医は患者全体を治療しようと専心する。いつでもかかりやすい診療を提供し、継続的に患者を診ていくなかで包括的なサービスをおこなう。たとえ家庭医療の範疇を超えた治療が必要な場合でも、家庭医は患者に対する責任を持ち続け、他の専門医が行う治療についても協同してかかわる。このようなケアモデルを、患者中心メディカルホーム(PCMH)という。ヘルスケアシステムがどんどん複雑になり細切れになっていく中で、PCMHは伝統的なケアのモデルから派生して創られた。これはまさに、医師中心のモデルの対極にある、患者中心のモデルである。

 PCMHのモデルは単一ではない。またその定義は、一つの診療、一つの建物の中だけで完結するものではない。PCMHのフォーマットを決定する一番の因子は、地域社会が何を必要としているかである。チーム医療を行う、受診しやすいようにコミュニケーションを改善したり診療時間を広げたりする、電子カルテのような高度情報システムを備える、質と安全を重視する、家族や地域社会という文脈の中で患者にケアを提供する。このような取り組みを行うことで、以下の4つの目標に近づくことができる:より良い健康、よりよいヘルスケア、1人当たりコストの節約、医者人生の向上。

 ヘルスケアシステムを継続可能なものにするには、プライマリケア、行動・精神医学、公衆衛生を統合する必要があるという認識が最近ますます広がっている。PCMHのなかには、伝統的なモデルをさらに広げて、メンタルヘルスやポピュレーションヘルスツールも導入しているところもある。PCMHのモデルが進化していくということは、家庭医が適切なケアを適切な時に適切な場所で患者のニーズに適したやり方で行うよう努力し続けるということである。