2017年7月4日火曜日

施設入居者の骨粗鬆症(part 1)



施設入居者の骨粗鬆症について,エビデンスをどのように臨床に適応するかに着目した記事がCanadian Family Physicianに掲載されています.
まずは導入部,part1です.

Osteoporosis management in residential care
How internal and family medicine resident physicians translate evidence into practice

Weiwei Beckerleg and Rachel A. Oommen
Canadian Family Physician May 2017, 63 (5) 411-412;


85歳の施設長期入所者であるB氏は,転倒により脊椎骨折を受傷した.B氏と出会ったのは最近のことだが,施設ケアにおける骨粗鬆症の治療について,刺激的な会話を指導医とするきっかけになった.これは,多くの医師がよく直面するジレンマを浮かび上がらせるものである.QOLや治療目標に焦点を当てながら,現在のエビデンスを臨床に組み入れることについて考えよう.

過少治療と変動


Osteoporosis Canadaによれば,B氏が1年以内に次の椎体骨折を受傷する危険性は20%である.たしかに,女性の3人に1人は生涯で1回は骨粗鬆症による骨折を経験するし,カナダでの50歳以上の骨折の80%以上が骨粗鬆症,つまり「静かな盗賊(注:無症状のまま骨量が減少していくことをこのように表現している)」によるものである.長期施設入所者には骨粗鬆症が多いという認識は広く共有されているものの,現時点ではあまり治療されていないことが多いようである.骨粗鬆症のマネジメントは施設によってかなりさまざまである.骨粗鬆症患者の治療の質を改善するには,目標志向型の介入が必要である.骨粗鬆症のマネジメントに関する研究はこれまで主に,地域社会に住む成人を対象に行われてきた.しかし,長期施設入所者はこのような研究から除外されることが多く、施設入所者の骨粗鬆症治療の決定を困難にしている。

最近公表されたOsteoporosis Canadaは、長期施設入所者を対象とした骨粗鬆症マネジメントのガイドラインである。ガイドラインによると、食事による1日1200mgのカルシウム摂取が望ましく、食事によるカルシウム摂取が1日500mg未満であればカルシウム補充が推奨される。骨折のリスクが高い場合(股関節や椎体骨折の既往、複数回の骨折の既往、骨折既往があり最近グルココルチコイドを投与されている、レントゲンで診断された椎体骨折、高リスクだと以前判断された)や余命が1年以上と期待できる場合は、少数の例外を除き、第一治療として経口ビスフォスフォネート、ついでデノスマブやゾレドロン酸が推奨される。