病院でも家庭医外来をしています。
普段の何気ない外来の臨床推論は、学習する資料が少ないですが、家庭医にとってはとても大事です。
若い女性。昨日からの発熱と悪寒。
時節柄、SARS-CoV-2抗原陰性は確認しました(インフル同時キットですが、こちらも陰性)
発熱患者の診察は、COVID-19以外の疾患を見つける時間である、と自分に言い聞かせています。
事前問診で、昨日は悪寒があったこと(いまはない)、上気道症状がないことは把握しています。この時点で局所所見に乏しい感染源による菌血症かなとあたりをつけました。
genaral appearanceは良好で、いろいろ聞いても熱と悪寒以外の症状はないとのこと。
それでも食い下がると、何となく体の節々が痛いという訴えはありました。
咽頭異常なし、心音呼吸音異常なし、頸部異常なし、腹部異常なし、CVA叩打痛なし、関節炎所見なし、皮疹なし。
どこにも細菌の居場所がないなーと悩みます。
こういう場合、患者にそのまま悩んでいることを伝えるようにしています。
「うーん、どこかにバイ菌がいそうなんだけど、どこにも見当たらないんですよねー」
すると、困っている医者を助けようと、患者が協力してくれることが多いです。
この患者さんも、「そういえば、熱があるから当たり前だと思っていたんですが、ちょっと頭が痛いです」と教えてくれました。
よくよく話を聞くと「思い出すと、熱が出る数日前からちょっとだけ頭が痛かったような」
頭痛の部位は左側で、重いような鈍いような違和感とのこと。
髄膜刺激徴候は陰性。
俯くと頭重感が起こり、左上顎洞・左前額洞に一致して叩打痛がありました(左右差あり)
鼻腔を覗くと、両側の鼻粘膜が高度腫脹し発赤しています。
これは細菌性副鼻腔炎だろう、と思いましたが、先行する上気道症状がない点に違和感があります。
これも、患者さんに助けを求めます。
「鼻のあなの隣にある副鼻腔という洞穴に膿が溜まっているようなのですが…」
「あっ、そうそう。私、数日前から鼻うがいを始めたんです!」
というわけで、鼻うがいにより、鼻腔内の細菌が副鼻腔に押しやられておきた細菌性副鼻腔炎と判断しました。
通常の問診では、頭痛があることを患者は言ってくれなかったのですが、
医者が困っている姿をみて、いろいろと教えてくれました。
「自分の思考回路を即時的に患者にすべて打ち明ける」
「診断がつかなくて困っている姿を見せる」
というのは、外来診断術として有用であると考えています。
同じ日に、心身症という触れ込みの高齢慢性腹痛患者さんに、同様のやり方であれこれ話を引き出したところ、剣状突起痛と診断できました。
(すでに撮影されていた腹部CTを見直すと、画像所見も合致していました)
というわけで、診断に困ったら、患者さんに助けてもらっています、という話でした。