2022年7月12日火曜日

大腸がんスクリーニングで家族歴を意識するか?


Ingrand I, Palierne N, Sarrazin P, Desbordes Y, Blanchard C, Ingrand P. Familial colonoscopic screening: how do French general practitioners deal with patients and their high-risk relatives. A qualitative study. Eur J Gen Pract. 2022 Dec;28(1):182-190. doi: 10.1080/13814788.2022.2089353. PMID: 35796607.


フランスにおける家族性 CRC スクリーニングにおけるGPの位置づけを探ることを目的とした質的研究です。


65歳以下で大腸がんになった患者とその第一度近親者に対する大腸がんスクリーニングに関して、GP対象に35件の犯行増加面接を行ってデータを収集しています。収集したデータはテーマ分析をしています。


その結果、大腸がんの第一親等に対する大腸がんスクリーニングに関する知識と実施状況は、GPによって大きく異なることがわかりました。

診断プロセスを開始しながらも、GPは自分たちが家族歴に関するリスクに関する情報の流れの主体であるとは考えていませんでした。

GPは、家族歴の調査の重要性を強調するものの、実際には時間がなくて、また患者 が提供する情報の信頼性を疑っていました。


研究者たちは、知識ギャップを回避し、家族歴収集の質を改善し、適切なスクリーニングにむずびつけることが課題であると指摘しています。


この研究を実臨床にどう応用するか考えました。

私は、定期通院患者に対しては40-45歳から年1回の便潜血検査を推奨するようにしています。(大腸ポリープ既往があればリスクに応じた期間で内視鏡スクリーニングです。)

しかし、家族歴については、そこまで気にしていませんでした。

これだと、40歳未満で大腸がんが起こりうる遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC: Hereditary nonpolyposis colorectal cancer)や家族性大腸ポリポーシス(FAP: Familial adenomatous polyposis)がもれてしまいますね。

そもそも、40歳未満で私の外来を定期通院する患者に、がんの家族歴を聞く、というプラクティスをしていませんでした。

今の自分のセッティングなら、40歳未満の方が定期通院していることが少ないので、若年者のスクリーニングに力を入れるより、40-45歳以上の患者に確実に便潜血検査を行うほうが現実的かなと思いつつ、40歳未満の患者に(大腸がんに限らず)がんの家族歴を聴取し、もし大腸がんの家族歴があれば、必要に応じて検査を行う、少なくとも40歳になったら便潜血検査を確実に開始する、というプラクティスがいいのかなと思いました。