2022年4月20日水曜日

心不全入院患者への教育的介入の効果をしらべるRCT


Hwang B, Huh I, Jeong Y, Cho HJ, Lee HY. Effects of educational intervention on mortality and patient-reported outcomes in individuals with heart failure: A randomized controlled trial. Patient Educ Couns. 2022 Mar 29:S0738-3991(22)00136-7. doi: 10.1016/j.pec.2022.03.022. Epub ahead of print. PMID: 35369996.


ソウルのuniversity-affiliated hospitalの入院患者を対象に、教育介入の効果をRCTで検証した論文です。


心不全の入院患者122名が研究参加者です。

介入群(n=60)では,入院中の看護師主導の個別教育セッション+退院後3回の電話連絡を行っています。

対照群(n = 62)は通常通りのケアです。


測定は患者報告アウトカム(入院時、3か月後、6か月後)と全死亡です。


追跡期間中(中央値:568日)に、介入群で7例(12%)、対照群で15例(24%)の死亡が発生しています(調整後ハザード比は0.16-0.98で、p=.046です)。介入群は対照群よりも患者報告での知識、セルフケア、健康関連QOLでより高い改善を示していました。


心不全ケアは患者との協働が重要だという認識は持っていましたが、RCTでちゃんと検証しているのは素晴らしいと思いますし、教育的介入はルーチンケアの一部だという主張も納得です。

追跡期間の間に全死亡が総計で22/122に発生しており、死亡リスクの高い集団で検証したのかなと思いました。本文読むと平均年齢66歳でNYHA Ⅲが32%、Ⅳが38%です。ソウルのuniversity-affiliated hospitalの入院患者が対象ですので、やはり重度心不全の方が多く集まったのだと思います。EF<40%のHFrEF患者が半数のようです。

対象者の投薬内容は、ACE inhibitor  20.5%,  ARB 27.9%, Beta blocker 65.6%, Diuretic 77.9%, Digitalis 19.7%で、SGLT-2iやMRA、ANRIについては記載がなく、現状の薬物療法の水準と同レベルの薬剤治療が行われていたかは疑問です。HFrEFは半数だけという点は考慮しなくてはなりませんが。

とはいえ、教育的介入が重要という主張はその通りですし、臨床医としては、新しい薬剤を使って満足というだけではなく、しっかりフォローしなくてはいけません。


この研究では看護師が電話で連絡を入れていますが、日本の家庭医療の文脈に直せば、家庭医療の継続性や近接性が活かされる分野でもあると思います。

病院家庭医としては、心不全急性増悪は入院加療で比較的早期に症状が落ち着くので、むしろ退院してからが勝負だという気持ちが必要なのですね。