2021年9月13日月曜日

暴力にさらされた女性の受診時における徴候

Vicard-Olagne M, Pereira B, Rougé L, Cabaillot A, Vorilhon P, Lazimi G, Laporte C. Signs and symptoms of intimate partner violence in women attending primary care in Europe, North America and Australia: a systematic review and meta-analysis. Fam Pract. 2021 Aug 27:cmab097. doi: 10.1093/fampra/cmab097. Epub ahead of print. PMID: 34448843.

https://academic.oup.com/fampra/advance-article-abstract/doi/10.1093/fampra/cmab097/6358619?redirectedFrom=fulltext


親密なパートナーからの暴力(Intimate Partner Violence: IPV)は、見逃されやすい問題です。

その性質上、患者さんが積極的にIPVについて医療者に開示することは期待されないでしょう。

でも、できる事なら気づいて対処したいものです。命と健康にかかわる問題なので。


このシステマティックレビューでは、IPV被害者の女性がプライマリケアを受診したときに、どのような徴候・症状を呈するのかを明らかにするために行われました。

IPVが直接の受診の動機になっている場合だけでなく、受診動機は問わないとのことです。

これはとても現実的な前提だと思います。


系統的レビューの対象は、ヨーロッパ、北米、オーストラリアのプライマリケアを受診した15歳以上の女性を対象とした定量的研究で、IPV被害者について調べているものです。

日本と文化圏が異なることに注意が必要です。


結果をまとめると、受診時のうつ症状、不安症状、性感染症、身体症状症が、IPVと関連していました。かならずしも身体的な暴力の痕跡(あざなど)に限らないという点が重要だと思います。

もしかしたら(というより、かなり高い割合で)、IPVについてこれまで相当数見逃しているのかもしれないと、深く反省しました。


プライマリケアに、うつ、不安、性感染、身体症状症の問題が持ち込まれることは結構ありますので、そのような方からお話を伺うときに、本研究が示したIPVとの関連を頭に思い浮かべておくようにしようと思います。

「身の安全が守られていますか?」という質問をすることで、もしかしたら患者のこれからの人生が変わるかもしれません。