2020年9月21日月曜日

帰納的/演繹的アプローチと質的/量的データとの組み合わせ



Academic MedicineのLast Pageは,毎号,医学教育研究にかかわるトピックが一枚の図表にまとめられています.

今年7月号のAM Last Pageが,帰納的/演繹的アプローチと質的/量的データについてであり,まさに知りたいことでした.


帰納的inductiveは,from data to theoryとありますが,観察されるデータを集めて理論を構築するというやり方です.
一方,演繹的deductiveとは,from theory to dataで,まず理論(仮説)があって,それを検証するためにデータを取るというやり方です.

質的研究は帰納的アプローチ,量的研究は演繹的アプローチと単純にとらえられがちですが,実際は違うよというのがこのページの論旨です.
そもそも,帰納的/演繹的は二項対立ではなくスペクトラムがあり.さらに,各段階で量的/質的どちらの研究も成り立ちます.

①帰納的アプローチ
質的研究では,伝統的なグラウンデッドセオリーが当てはまります.観察されたデータに基づき現象を説明する理論を構築する手法で,観察者はtabula rasa,つまり何も書かれていない白紙のようにふるまうことが求められます.

量的研究では,探索的因子分析がここに当てはまります.調査票などから得られたデータを統計学的に解析し,背後にある理論的構造(これが因子です)を特定します.

②どちらかというと帰納的アプローチ
質的研究ではエスノグラフィーが当てはまります.ある集団の文化を観察したデータと,人間の社会的振る舞いに関する既存の理論とを組み合わせます.

量的研究では,構造方程式モデリングが当てはまります.あるデータセットを見た時に.それを説明できるような統計学的モデルを複数考えて,どれが最も当てはまるかを調べます.

③どちらかというと演繹的アプローチ
質的研究では,構成主義的グラウンデッドセオリーが当てはまります.構成主義は「見る人によってリアリティは異なる」という考え方にたちます.既存の理論を発展させることを目標にデータを解析していきます.

量的研究では,ベイズ統計学のアプローチが当てはまります.既存の知識やデータを用いた研究です.

④演繹的アプローチ
多くの量的研究はここにあたります.命題を検証するために帰無仮説を立てて統計学的に処理し有意差がでれば仮説を棄却し命題が証明されます.

質的研究では,内容分析が当てはまります.質的データを客観的かつ数量的に分析します.


それぞれの研究法は知っていましたが,このようにまとめるととてもすっきりします.