2019年11月4日月曜日

正中弓状靭帯圧迫症候群


知らない病名に出会ったので,まとめます.

正中弓状靭帯は,横隔膜の大動脈裂孔を形成する靭帯です.
通常は腹腔動脈の頭側に位置するこの靭帯が,腹腔動脈の起始部にかかってしまうことがあり,同部位を圧迫することで,虚血症状が出現したり,動脈瘤を形成したりします.
ただし,多くは無症候性です.側副路が発達することもあるようです.

動脈瘤が破れると後腹膜血腫を生じます.
正中弓状靱帯圧迫症候群による腹腔動脈根部狭窄を合併した後腹膜血腫の1例
正中弓状靭帯圧迫症候群に伴う膵十二指腸動脈瘤破裂の1例
後腹膜出血によって発見された正中弓状靭帯圧迫症候群の2例
後腹膜血腫は特発性も多いですが,原因は他にも様々です.
やはり血管造影は診断には必須ですね.センター病院に紹介しなくては.

自分の臨床の文脈では,「呼気時の腹痛」「食後の腹痛」というキーワードで想起すべき疾患として引き出しに入れておくとよいのかなとおもいました.
解剖学的に考えれば,「呼気時」なのは理解できます.
割と強い疝痛になることもあるようで,知らなくては見逃しますね.

古い報告ですが,この4例のケースシリーズが臨床像をつかむにはよいようです.
腹腔動脈起始部圧迫症候群

ここまでしらべたところで,わかりやすいレビュー解説記事を発見
Celiac artery compression syndrome(正中弓状靭帯圧迫症候群)について


まとめると
・正中弓状靭帯圧迫症候群は後腹膜血腫の原因となりうる.
・「呼気時の腹痛」は正中弓状靭帯圧迫症候群を疑うキーワードである.
 (誘因がはっきりしないことも多いが...)