WONCAで開催されたplanery lectureが非常に示唆に富む内容でしたので、メモ書きで恐縮ですが共有します。
発表者はBelong Cho (Seoul National University)氏です。
論文たくさん出されています。ざっと見る感じ、home-based careの研究が多いですね。プライマリケア研究ど真ん中っていう感じです。
・大統領弾劾と研修医ストから話が始まりました。大変な情勢ですね。
・韓国は住民一人当たり受診回数が最多らしいです。次点が日本
・韓国のプライマリケアはhigh access, low depthだと言い切っている。いまがturning pointだと。すげー。
・care fragmentationが問題で、プライマリケアの多くがsubspecialistによって提供されている。日本と同じですね。
・ACSCによる入院が多い。総合病院は非常に込み合っている。
・costの2割、profitの3.5割が保険外。これでは制度の継続性がない、とのこと。
・海外からの整形ツアーが盛ん。医療者がこのマーケットに取られている。
・高齢化と慢性疾患の増加、high-cost patientの増加。医療費の50%を5%の患者に費やしている。chronic care modelでアウトカムを改善すべき。このあたりも日本と同じ。
・韓国でも、家庭医が効果的で効率的なケアを提供していることが証明されている。(DW shin et al Ann Fam Med 2014.)
・ソロプラクティスが多いけど、Integrated Team-based careを進めないと複雑な医療ニーズに対応できない。
・Patient centered medical homeを提案している
・primary-care centered chronic care management pilot with care coordinatorが韓国で始まっているとのこと。care plan developmentのあと、医師またはケアコーディネーターがpatient managementをして、モニターと評価を1年に2回して医者にフィードバック。
・low-value careが現状では多い。outcome-based incentive、team-based care paymentを提案している。
・ヘルスプロモーションにもインセンティブを与えるスキームも提案されている。
・日本でも、チームでhigh-value careして予防に力入れるほうが、診療所や病院の収入は減りますからね。同じような課題に直面しているので、韓国のスキームは参考になります。
・home-based careが最近急激に増えたらしい。政策による影響。これはいいですね。
・韓国はsamsungやkakaoがあるからか、IT、AIを活用していこうという意欲が高いように思います。digital transformationをしていくんだという気概を感じます。
・real-timeで患者情報を集め、personalized decison-makingとpatient engagementをしていく。昨日の講演でも、患者が自分の血糖推移をもとにAIでどんなself-managementをすべきかわかるようにしている、とありました。pastaというツールで、診療報酬もちゃんとついているようです。
・ウエアラブル端末で血糖の推移を予測するらしいです。すげーなーと思う反面、私が普段見ている患者層には適応できないなともおもいます。デジタル格差をうまないのかなと心配になります。
・とおもったら、ちゃんとdisparities in telemedicine during COVID-19にも言及しています。(Qian et al 2022)
・clinician burnout。電子カルテの煩雑な業務にAIを使ってイノベーションしていこうということらしいです。
・Legal and policy form for primary careの重要性を強く主張されていました。
・「法的根拠がなければ、プライマリケアはアイディアに過ぎない。」しびれる発言。
・韓国家庭医学会は法策定のために働きかけているようです。大事ですね。
・super-agingへの対応、cost containment, equitable access to continuous careのために、プライマリケアを法的に担保することが必要とのこと。
・「プライマリケアはfront doorではない、医療のfoundationである。」これもしびれますね。
・"We are at a crossroads. This is not just a tecnical issue, it is a choice about our values."
総じて、国際学会のホスト国が自分たちの医療制度の現状の欠点を客観的に伝えたうえで、今自分たちが何をしており、将来のビジョンを叶えるために今すべきことを主張する、素晴らしい講演でした。
日本も多くの課題を共有しており、私たちが多方面に働きかける必要があると感じました。
また、WONCA全体を通じて、家庭医はhealth equityをめざすのだという主張がなされており、非常に勇気づけられました。(口演でもprimary care for vulnerable populationのテーマが独立して設けられていました)