2017年8月11日金曜日

睡眠薬の使い方


American Family Physicianを購読し始めました.
早速,まとめてみます.


Insomnia: Pharmacologic Therapy
Am Fam Physician. 2017 Jul 1;96(1):29-35.

要約
家庭医を訪れる不眠患者は年間550万人を超える.行動への介入が治療の本幹であるが,薬物治療が必要な患者もいる.不眠に対する薬物治療の利害を理解しておくことが重要である.高齢者には徐放性メラトニンとdoxepinが第一選択薬であり,いわゆるz-drug(ゾルピデム:マイスリー,エスゾピクロン:ルネスタ,zaeplon: Sonata)は,第一選択薬が無効な時のために残しておくべきである.一般集団に対して,寝付けない場合には徐放性メラトニンとz-drugが考慮される.中途覚醒がある場合には,低用量doxepinとz-drugが考慮される.ベンゾジアゼピンは乱用になりやすく,他により良い選択肢があるので,使用は推奨されない. オレキシン受容体アンタゴニストであるスボレキサント(ベルソムラ)はそこそこ効果があるが,z-drugと同様の成績であり,薬価ははるかに高くかさむ.鎮静効果のある抗ヒスタミン薬,抗てんかん薬,非定型抗精神病薬は,不眠とは別の状態の治療を主として用いるのでなければ推奨されない.睡眠時無呼吸や夜間低酸素を伴う慢性肺疾患があるばあいは,睡眠薬を処方する前に睡眠の専門家の評価を受けるべきである.

SORT: KEY RECOMMENDATIONS FOR PRACTICE
ベンゾジアゼピンは短期間の睡眠のアウトカムを改善させるが,重大な副作用があり依存を形成する可能性がある.(evidence rating B)
z-drug(ゾルピデム:マイスリー,エスゾピクロン:ルネスタ,zaeplon: Sonata)は一般集団において睡眠のアウトカムを改善させる.(evidence level A)
ラメルテオン(ロゼレム)はプラセボに対してわずかに効果があるだけだが,副作用が少ない.(evidence level B)
低用量doxepin(Silenor)は睡眠のアウトカムを改善し,プラセボと比較して重大な副作用を招かない(evldence level A)

BEST PRACRICES IN SLEEP MEDICINE: RECOMMENDATIONS FROM THE CHOOSING WISELY CAMPAIGN
高齢者の不眠,興奮,譫妄の第一選択薬としてベンゾジアゼピンや他の鎮静薬・睡眠薬を用いない(American Geriatrivs Society)
成人の慢性的な不眠にたいし,まず睡眠薬を使うのは避ける.認知行動療法や必要に応じた補助的治療としての薬剤療法を施行する.(American Academy of Sleep Medicine)
成人の不眠に対する第一選択の介入としてルーチンで抗精神病薬を処方しない(American Psychiatric Association)

まずは非薬物的療法を
寝付けない不眠:徐放性メラトニン,z-drug
中途覚醒による不眠:エスゾピクロン,Doxepin,ゾルピデム
高齢者:Doxepin,徐放性メラトニン,ラメルテオン
抑うつにともなう不眠:Doxepin,ミルタザピン(レメロン,リフレックス)