2024年9月14日土曜日

慢性冠動脈疾患患者(POEMs AFP Review)


POEMs: Patient-Oriented Evidence That Matters

ACC/AHA Guideline for the Management of Patients With Chronic Coronary Disease


慢性冠動脈疾患患者の管理に関する ACC/AHA ガイドライン


・長期のβ遮断薬はルーチンでは推奨されない。

・心不全、過去 1 年以内の心筋梗塞、またはその他の適応症のある患者に限定すべき。

・β遮断薬およびカルシウムチャネル遮断薬は、慢性狭心症症状の治療における第一選択薬として推奨されている。

・そうなんだ!全例β遮断薬ではないのか…知識がout of dateになっていました。

・とはいえ、症状あれば相変わらず第一選択。


・DAPTは、生涯にわたるべきではない。

・出血リスクが高い患者ではPCI後 1 ~ 3 か月

・出血リスク低~中程度では 6 か月

・ACSの既往がある患者では 12 か月

・このあたりは、しっかり押さえておきましょう。心筋梗塞後の管理している人は私の外来にもたくさんいますので。


・スタチンは、慢性冠動脈疾患の患者の脂質異常症に対する第一選択薬で

・魚油、オメガ 3 脂肪酸、ビタミンは、RCTで心血管イベントを減少させなかった。

・最大耐量のスタチンでもなおTGが持続的に高い場合は、イコサペントエチルを検討せよ。

・TGが高いならイコサペント酸エチルなのですね。選択肢として覚えておこう。

・循環器科から自分のところにバトンタッチするときには、スタチン+エゼチミブがほぼ全例入っているように思います。2015年のNEJMのRCTですかね。まあこれはこのままでいいかなと現時点では思っています。


・SGLT-2 阻害薬および GLP-1 受容体作動薬は、糖尿病を併発していない患者も含め、慢性冠動脈疾患の患者に検討すべきとのこと。いまそんなことになっているの!?

・まさか全例使うわけではないよね?どうやって対象者絞ればいいんだろう。

・現時点では保険適応の問題もあるし、糖尿病や心不全(SGLT-2I)があれば、ということになりますよね。今後どうなっていくのだろうか。



2024年9月10日火曜日

乳腺炎(AFP Review)


Mastitis: Rapid Evidence Review


・授乳による乳腺炎:米国では約10%で発症。通常は出産後 3 か月以内


・大半は真の感染症ではない。1~2日間の保存的治療 (NSAIDS、氷で冷やす、授乳を続ける、搾乳を控える) だけでよくなることも多い。

・改善なければ一般的な皮膚常在菌をカバーする狭域抗菌薬を検討。

・「まずは冷やす、そしてNSAIDs」というのは、プライマリ・ケア医としてかなり重要なメッセージだと思います。1-2日でフォローして、良くならなければ抗菌薬。

・乳汁培養の採取を検討すべき、とのこと。やったことないなぁ。

・個人的に、かなり治療に難渋し、MRSAカバーしないと治療できなかったことがあります。やっぱり病歴が大事だなと思いました。

・本文中にはかなり細かく推奨が書かれており、参考になります。Do not forget to address mental health.とあり、強く共感しました。


・乳汁産生の過剰刺激や激しい乳房マッサージによる組織損傷は高リスク。

・頻繁な授乳、乳房を空にするための過度の搾乳、加温、乳房マッサージは、症状を悪化させる可能性がある。

・最善の予防法は、乳児の正しい吸い付き方を含む適切な授乳法と、可能であれば搾乳ではなく生理的な授乳を奨励すること。

・このあたり、口述的に搾乳が推奨されていたこともあり、今でも搾乳が治療だと勘違いしている医療関係者はいるように思います。耳学問の怖さでもあります。


・そういえば、抗精神病薬による高プロラクチン血症が原因の乳腺炎をみたことがあります。珍しいなぁと思いましたが、そりゃあそうかとも納得しました。

関連文献:Tian C, Wang H, Liu Z, Han X, Ning P. Characteristics and Management of Granulomatous Lobular Mastitis Associated with Antipsychotics-Induced Hyperprolactinemia. Breastfeed Med. 2022 Jul;17(7):599-604. doi: 10.1089/bfm.2021.0341. Epub 2022 Apr 21. PMID: 35447036.

2024年9月7日土曜日

慢性咳嗽(AFP Review)


臨床、研究、翻訳と忙しく、発信したい欲が満たされたがために、あまり更新しなくなった本ブログですが、久しぶりに記事を書きます。


AFP: Chronic Cough: Evaluation and Management

慢性咳嗽についてのレビューです。

コメントしつつまとめます。


・成人では 8 週間以上、小児では 4 週間以上続く咳嗽

・成人で多いのは、上気道咳嗽症候群、喘息、非喘息性好酸球性気管支炎、胃食道逆流症、咽喉頭逆流症


・初期評価:胸部X線、スパイロメトリー、診断的治療。

・喘息疑うなら気道可逆性をみる。呼気NOや喀痰好酸球も。

・慢性咳嗽でやってくるOSASもあるとのこと。ここは要注意ですね。

・CTはあまり意味がないかも、とのこと。確かに、プライマリ・ケアレベルで、慢性咳嗽の診断がCTでつく経験はあまりないです。


・レッドフラッグ:嚥下困難、血痰、嗄声、喫煙者で45歳以上の新規症状、安静時/夜間の呼吸困難感、嘔吐、体重減少。こういうのがあれば当然CTも撮りますよね。

・薬剤 (ACEIなど)、環境、職業、曝露を評価せよ


・上気道咳嗽症候群には、結局、抗ヒスタミン薬しかないのかなぁ。

非喘息性好酸球性気管支炎:非喫煙患者に起こるステロイド反応性慢性咳嗽

・ICS+効果不十分ならLT阻害薬。


胃食道逆流症や咽喉頭逆流症を疑えば、禁煙、体重減少、頭部挙上、遅い時間に食べない

・PPIの有効性ははっきりわかっていないのは有名な話かと。


・慢性の難治性咳嗽には、ガバペンチンorアミトリプチリン、理学/言語療法

・でもその前に、気管支鏡や鼻内視鏡などの追加検査が必要かも。


・小児で多いのは、長期にわたる細菌性気管支炎、喘息、気管支拡張症、上気道咳嗽症候群、胃食道逆流症。自然に治まる可能性が高い。喘鳴や労作時呼吸困難がなければ2週間くらい観察してもよい。

・個人的には、小児慢性咳嗽は一度は異物誤嚥を疑うべきだと思っています。

Suzuki H, Hiraoka T, Mizumoto M, Kondo Y. Pediatric case of exfoliated primary tooth aspiration. Pediatr Int. 2022 Jan;64(1):e15261. doi: 10.1111/ped.15261. PMID: 35938601.

(↑慢性咳嗽の原因が歯牙誤嚥だったケースレポート)


2024年4月30日火曜日

高齢者の転倒予防(JAMA)

 

Colón-Emeric CS, McDermott CL, Lee DS, Berry SD. Risk Assessment and Prevention of Falls in Older Community-Dwelling Adults: A Review. JAMA. 2024;331(16):1397–1406. doi:10.1001/jama.2024.1416


JAMAの最新レビューを概説していきます。


・地域に住む高齢者をみたら、転倒について定期的に尋ねること。しかし、患者の多くは転倒を報告しない。転倒の70%は報告されていない可能性がある。


・歩行速度を評価するのが簡単かも。平らな地面を4mあるくのに5秒以上かかるようなら歩行速度は低下しており、転倒のリスクが高くなる。


・単独の介入は効果が乏しい。いろいろ組み合わせること。

  薬の見直し(ポリファーマシー是正を含む)

  エクササイズ

  起立性低血圧、失禁、足の問題、その他急性/慢性疾患の管理

  視力、聴力、栄養

  家具の交換、敷物の撤去、手すりや歩行補助具など住宅改修

ただ、これだけしても、転倒する患者の数は有意には下がらない。


・転倒リスクの高い人に対する運動は、週3回の頻度で3か月以降の継続が必要


どうも、画一的な介入では転倒の数を優位に減らすことは難しそうです。劇的な介入法はないのですね。

ここに合わせてリスクを考え、とくにリスクが高いと思われる患者層に、上記の介入をしていく、というのが現時点での落としどころだろうと思います。

個人的には、白内障を治療する、外耳道を観察する(耳垢塞栓による難聴を起こさせない)、簡単な運動を指導する、夜間の尿の回数を減らすような非薬物/薬物治療を行う、ハイリスク薬剤をできるだけ減らす、スリッパと敷物はやめてもらう、骨粗鬆症の介入を行う、ということを普段やっていると思います。



フルタイム臨床医+日曜研究者になりました


大学院を卒業し、4月からフルタイム臨床医になりました。

4.5日が小病院で病棟+外来+訪問診療+教育、0.5日が診療所外来です。

忙しいですが、やっぱり臨床は楽しいですね。忙しいですが。


研究もこれまで通りやっていきたいです。

新たな研究も複数始めました。夜の時間や休日に頑張ってやっています。


ブログはできる範囲で細々と更新していきたいです。