路上生活を営んでいる方を講演や街頭から排除するという施策は、日本でもよく行われています。
オリンピック前もそうでしたし、私が今いるところでは、国体前にこのような排除が行われました。
街頭排除が行われた後、コミュニティが散り散りになってしまい、支援が必要なはずの方が見えなくなってしまったという実感が私にはあります。
この論文は、街頭排除による健康被害と医療システムへの影響を明らかにしようとしたものです。
2018年1月から2020年1月にかけて、サンフランシスコで路上生活経験者(PEH)に対して健康・福祉サービスを提供する医療従事者39名を募集し、自由記述のアンケートを行いました。
得られたデータをテーマ分析し、街頭排除が及ぼす健康への影響を2つ抽出しました。
①持ち物や医療品などの物的損失と、②地理的な移動、コミュニティの分断、フォローアップの喪失などの不安定です。
この2つのため、慢性疾患、感染症、薬物使用障害の状況が悪化し、身体的にも精神的にも悪影響となった可能性があるとのことです。
また、排除によって、救急や入院の利用が増加し、医療制度に悪影響を及ぼす可能性があることも指摘されました。
路上生活者を町から排除することの健康への影響を調べようと思った際に、当事者に研究に協力してもらう、量的なアウトカムを調査する、といった方法が考えられると思いますが、なかなか実施のハードルが高い研究になります。決してそのような研究をしなくていいという意味ではありませんが、支援者へのインタビューを通じて問題に迫るこのような研究は、feasibilityが高く、十分に計画すればこのように質の高い結果が得られると思います。
日本でも同様の研究が必要だと思います。